II – 2 組織(Organisation)

プロジェクトチームの組織(Organisation of Project Team)
プロジェクト執行で最初に行う作業は、プロジェクトチームの立ち上げだ。組織の構成員は全員がチーム要員となる可能性があるが、いろいろな条件を考慮すると現実にはチームに従事できる構成員は限られている。プロジェクトチームの組織づくりは、組織内に限らずいろいろな専門家の組み合わせを考慮することが必要となる。また、いろいろな背景を持った人たちが一緒に働くプロジェクトチームの立ち上げは、人の出入りが絶えずあるということを前提としてチームを組み立てる必要がある。
様々な背景を持つスタッフがプロジェクトチームで働く場合、最も注意しなければならないことは、職務分担とその責任分担にある。伝統的な日本型の組織でスタッフ全員が組織内構成員の場合、規則に基づく職務分担の他に年功序列があるので、指示は直接の上司以外からも当たり前のように来るし、直接の上司である担当責任者以外から報告を求められる場合も当然のことのように行われる。
年功序列が伝統的に優先している組織に見られる運営形態は、業務の指示と報告がラインを越えて行われることが行われても、構成員はラインにこだわることなく対応の必要性に応じて行動している。伝統的な年功序列の組織は全体が一体となって機能する運営形態を備えた非常によくできた組織といえる。
守備範囲以外の業務に責任を感じない新規参入スタッフとプロジェクトチームを組むことは珍しくない。契約に記された職務記述書に従って勤務するスタッフは業務担当範囲内の業務には責任を持つが、守備範囲以外の業務には責任を持たない。伝統的な組織においても指示された業務が守備範囲内であれば責任を持って取り組むが、指示された業務が範囲外ならばやらないというスタッフがみられるようになった。
効率的なプロジェクトチームを運営するためには、スタッフの守備(責任)範囲を明確にすることが必要だ。一部の人だけが谷間の作業をすくいあげていかなくてもいいように、作業の谷間を作らないような組織づくりの工夫が必要となる。
業務執行中に、スタッフ間の誰が担当すればいいのかよくわからない作業が発生することがある。こうした谷間の作業が発生するのは各自の職務分担内容が具体的に明確になっていないことに原因がある。ポストの職務内容を具体的に示している組織もあるが、抽象的な定型文言による職掌規則だけの伝統的な組織も少なくない。
組織内構成員だけの組織はお互いの守備範囲が多少とも重なり合い、個人の責任感に支えられて「もれ」が少ないという面がある。問題が発生したときにプロジェクトチームの誰かにその問題を伝えれば、連絡を受けた人が直接の担当者ではない場合でも所属組織内で情報が共有され、すみやかに問題解決がなされることがある。伝統的組織は職務記述書(Job Description)に基づく組織に比べると柔軟な対応ができる。
伝統的な組織では自然発生的に担当と担当の谷間を各担当者の責任感で補い合い、業務に谷間を作らないように活動することが自然に行われてきた。高度成長を支えた伝統的な日本型は一人ひとりの構成員が同じような背景を持っていることが常識として通用する時代の組織だった。スタッフが設定された職務分担を超えて、無意識のうちに組織の利益になる行動をとることが当たり前のシステムであった。
必ずしも同じような背景を持っているとは限らないスタッフが集まっている組織に新しく参加する人がまず知りたいのは組織内での自分の立場だ。なぜなら、自分は組織内のどの位置にいて何をどこまでやっていいのか、誰の指示で動けばいいのか、誰に結果を伝えればいいのか、誰を使っていいのかを知りたく思うのは当然だからだ。
新規構成員が組織内の立ち位置をよく理解するためには組織図が有効となる。組織図には各セクションの上下左右の関係をはっきりと描いてあるからだ。組織内の上下左右の関係を明らかにしておくことで、新しい構成員は自分がどこのセクションにいて何をやらなければならないのかが理解できる。外部から新しく組織に参加する人が組織図によって自分の立場を理解し、即戦力になることが可能になる。

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