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組織運営の技術

組織運営の技術-権限移譲
 
組織を運営するために、組織の長は権限の一部を部門長に委嘱(Authority Delegation)します。権限の委譲はポストに認められている義務と権限の範囲内における業務執行の全権を委嘱するということです。
会議に決定権のある部門長だけが出席するためには、部署の長に付随する義務と権限を明確にしておく必要があります。部門長のポストの義務と権限が明確ということは、そのポストに与えられた権威(Authority)の中において全権ということです。
ポストの業務内容を具体的に明示しないままにポストの権限を委譲すると、全権の範囲が不明確なために、委嘱された人が権限を与えられたのだからフリーハンドを持ったとあんdHandh誤解することがあります。現地法人の運営を任された責任者が、全権をフリーハンドと誤解して起こす不祥事は枚挙にいとまがありません。全権は決められた枠内での全権です。決してフリーハンドではありません。
 権限を委譲するためには委譲するポストの職務が具体的に表現されていなければいけません。多くの組織がポストの職務を抽象的な言葉で説明して、ポストに任命するときに人物で任命し職務を丸投げにしているのが実態です。その結果、ポストに就いた方が全権を委任されたと誤解して、独善的にふるまって後で不祥事が明るみに出ることは珍しくありません。
まわりの方たちがポストに就いた方に遠慮や忖度をして、その方の言動に何も言わないことがあります。権威がポストの職務内容内のみで与えられているにも関わらず、あたかもその人に権威がついているように周りがふるまってしまうからです。
こうした誤解を避けるために、最近は企業があらかじめ定めた職務内容に基づいて、必要な人材を採用する制度のジョブ型雇用を推進するという流れがあります。ジョブ型雇用の組織運営の基本は各ポストの権限と義務、職務内容を明確にして、権限をポストに譲渡してポストの責任を明確にすることから始まります。
歴史的に権限の範囲を明確に決めてある委嘱(Authority Delegation)は日本社会には根付いていません。理由として責任者の責任範囲を明確にしない文化があります。その結果、ポストの職務内容(Job Description)は具体的に明文化されていません。ポストの義務と権限が明示されていないので、多くの組織でポストの義務と権限はポストに就いた人について回るのが当たり前になっています。
また、組織によっては特定の人のためにポストを新設するということすら行われてきました。これらはすべて職務内容(Job Description)を具体的に明らかにしない組織運営が行われているからです。
 これまでの組織運営は新しく組織に加わると、組織の文化に染まるまで時間をかけてきました。会社の場合は就職というよりも就社です。今求められているのは、新しく組織に参加すると、言い換えると就職するとすぐ戦力として活躍できる組織の運営です。そのためには組織の業務執行基準の標準化と各ポストの業務内容や業務手順の明文化が必要です。
 また、業務執行基準の標準化と各ポストの義務と責任を明確にすることで、合理的に組織運営が行われるようになります。組織としての決定が速くなり、同じ仕事がより少ない人と時間でできるようになります。運営の生産性が上がれば、もっと新しい仕事ができるようになります。

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