組織運営

組織運営

組織運営に技術があると知ったのは、英国人の組織と一緒に仕事をしたときでした。彼らは夏に3週間、冬に3週間の休暇を取りました。当然のことのように責任者も交代で休暇を取ります。その間、代行者が責任者に代わって組織を運営しました。また、担当者が交代することも少なくありませんでした。その場合は新しく担当者が赴任してきます。新任者は前任者と同じように業務を遂行し、担当者が交代したことを感じさせることはありませんでした。業務執行の内容、程度、質が同じだからなのです。もちろん人にはそれぞれの個性がありますから、1から10まですべてが同じというわけにはいきません。合同ではないが相似といった感覚でしょうか。
 誰もが同じようなレベルで仕事ができるのは、どうやら彼らは学校で標準的な仕事の進め方を学んできているようなのです。彼らは大学出もいれば専門学校卒もいました。学校が違うし学部も違うので、学んできた内容は全く違うようですが、仕事の進め方が同じなのです。違う背景を持った人が全く同じように業務執行ができるということは、基準化された業務執行の方法を実務として学んできているからだろうと想定せざるを得ませんでした。だから、いつ、なんどき担当が変わろうとも引継ぎがすめば、組織としては何事もなかったように進みました。みんなが組織運営の技術を習得しているからだと感じたときでした。
 日本の組織をみますと、大きな組織も小さな組織も上下関係で支配されています。組織内では年功序列、組織と組織では力関係。対等の関係を理解することはむつかしいようです。交渉は対等の関係を理解してはじめて成立しますので、対等の話し合いができないことには交渉は成り立ちません。上下関係や力関係で話をするのはパワハラになりますし、恫喝になります。そこには組織を運営する技術の土台となっている対等の関係はありません。
 組織運営の技術はいろいろな要素がもとになっています。人口が減っていく中で日本の立ち位置を守っていくためには、組織運営の技術の一つ一つを理解していただくことが必要です。そして、組織運営の在り方を変えていかなければ、遠くない将来に、極東の小さな普通の国になってしまうことは避けられそうにありません。それもいいではないかという議論もありますから、わたしたちは今岐路に立っているといえます。コロナ禍のもとで新しい生活が模索される環境にあって、みなさんにはどのように組織を運営すればいいのかを考慮していただき、組織運営の技術を身につけていただけることを切に望んでいます。

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