組織運営の技術
組織運営の技術-運営の課題
いろいろな日本の社会について、課題は経営・運営にあるという話がよく言われるようになってきています。日本の社会が高度成長期を経て技術的には世界の最先端を行っていたのには違いはないようです。しかし、新型コロナウィルスの蔓延対策を通して行政のデジタル化の分野などでは後れを取っているようだから、社会のデジタル化を進めなければならない、という掛け声が大きくなってきました。そこで、次の一歩を進めなければなりませんが、課題は社会の運営や組織の経営にあるという論調です。
しばらく先進国の仲間入りをしてきた日本の組織運営に、どのような課題があるのでしょうか。課題を理解するヒントは何が日本を先進国に押し上げてきたかを振り返ることにあります。日本を先進国に押し上げた原動力は高度成長をもたらした製造業の技術です。製鉄、家電、自動車など。製造業のモノつくりの技術です。Made in Japanは消費者がさわって、使ってみて、乗ってみて便利、気持ちいい、おいしいと感じ「さすが日本製品だ!」が世界の隅々にいきわたりました。しかし、モノつくりの技術(ハードの技術)はすぐ模倣されました。
世界の最先端を行ったモノつくりの技術に対して、江戸時代に確立された日本の組織を運営する手法(ソフトの技術)はどうでしょうか。徳川の幕藩体制はヨーロッパの封建制度と違って、幕府による諸大名の支配は恫喝を基本とする制度です。1万石から100万石までの大小二百を超える国を、参勤交代で縛っていました。諸国を力で支配する手法は、藩内においても人事面で適用されました。薩長が率いた明治維新の新政府はヨーロッパ型の運営を目指しましたが、中央集権の政府が基本とした運営手法は幕藩時代と同じ力による運営でした。その結果、速やかに統制が取れた国が誕生できましたし、西洋の植民地となることはありませんでした。戦後の日本運営においても手法が変わることはありませんでしたから、よく統制が取れた変わらぬ日本社会が復興に役立ちました。だから、日本の組織を進駐軍が直接運営することはなかったのです。会社組織も同じ手法を基本として人事にも組合活動にも適用して運営してきました。
社会の運営は幕府や藩の運営の原則をそのままにして近代化した手法を取り、西洋の進んだモノつくりの技術のみを取り入れてきたことが、大変ラッキーな結果を生んできたといえるかもしれません。上下関係に基づく恫喝を基本とした運営は、組織と組織内を統括する非常によくできたシステムでした。しかし、契約を基本とした対等の理念の理解に基づく組織運営(ソフトの技術)はついぞ育ちませんでした。だから、日本型の経営・運営を模倣するところはありません。いまだにハードの技術にこだわる組織の運営の課題は、拙い組織運営の形態にあり3周遅れの今を招いた原因の一つといえそうです。
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