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在宅介護と在宅医療が支える「自宅で暮らしたい」という思い~看護小規模多機能型居宅介護のお話し~
介護サービスには、大きく「在宅サービス」と「施設サービス」があります。どちらのサービスも利用するにあたり、サービス利用者の「要介護状態」、「生活環境」、「利用者の希望」を組み込んで必要なサービスを選択していきます。
今回のお話しは、以前noteにも書かせていただいた患者さん(この人をBさんとします)が在宅生活を望んでいながらも、自宅で1人の生活に限界が近づいていること、そのために介護施設への入居が必要だとBさん本人も感じていること。しかし、身寄りがないために入居できる介護施設が少ないことなど、様々な問題に対して僕たちがサポートしていくお話になります。
前回の記事からも転倒を繰り返していたBさん
当院に通院されている60代のBさん。独居で身寄りがなく、自宅での生活を続けたいという強い思いを持っている方です。ただ、現実には自宅での転倒が多く、日常生活を送る意欲も低下している状態が続いていました。
僕たちはBさんのその気持ちに寄り添いつつ、安全に生活を続けられる方法を模索してきました。
自宅にこだわる理由と課題
これまで、Bさんには介護施設への入居を勧めたこともありました。いくつかの施設を見学してもらいましたが、「やっぱり自宅がいい」という気持ちが強く、なかなか入居先が決まらない状況でした。その間にもBさんの自宅での転倒は繰り返され、身体機能(ADL)の低下が進んでしまいました。
実は、Bさんのように「身元保証人」がいないことで施設入居が難しいケースは珍しくありません。多くの介護施設が保証人を求めているため、身寄りがない方にとっては大きなハードルとなるのです。
看護小規模多機能型居宅介護という選択肢
そこで僕は、Bさんが自宅での生活を続けながら安全に暮らせる方法を考えました。その一つが「看護小規模多機能型居宅介護」(通称:看多機)という介護サービスです。これは、自宅を生活の拠点としながら「通い」「訪問」「泊まり」の3つのサービスを組み合わせて利用できる仕組みです。必要に応じて看護やリハビリも受けられるので、医療と介護の両面から支援が可能です。
僕はこのサービスがBさんに適していると考え、担当のケアマネージャーに提案しました。看多機を利用すれば、Bさんが「自宅で暮らしたい」という思いを大切にしつつ、転倒や体調悪化のリスクを減らせる可能性があります。
在宅介護と医療が連携することで生まれる安心感
近年、Bさんのように「自宅で暮らし続けたい」と希望する高齢者が増えています。その背景には、慣れ親しんだ環境で最期まで暮らしたいという思いだけでなく、施設入居のハードルが高いという現実があります。
しかし、看多機のようなサービスだけでなく、訪問診療や訪問リハビリ、訪問介護といった在宅で利用できる医療・介護サービスが充実していけば、たとえ身寄りがなくても安心して自宅生活を続けられる道が開けると僕は考えています。
Bさんとのこれから
僕たちのアプローチは、Bさんの生活が少しでも安心で充実したものになることを目指しています。看多機を利用することが今後の選択肢として現実的になれば、Bさんは「自宅を拠点にする」という希望を叶えながら、転倒のリスクを軽減しつつ、日々の生活意欲を取り戻せるかもしれません。
もちろん、課題も残っています。Bさんが望む生活を実現するためには、ケアマネージャーや訪問スタッフとの連携が欠かせませんし、何よりBさん自身の気持ちの変化も必要です。僕たちはチームとして、Bさんに寄り添い続けていこうと思っています。
自宅での生活を支える仕組みを
Bさんのケースを通じて僕が強く感じたのは、在宅介護と在宅医療の連携の重要性です。自宅に居たいという気持ちは誰もが抱くものであり、それを支える仕組みがあれば、施設入居が難しい方でも希望を持ち続けられるのではないでしょうか。
岸辺くすのき透析クリニックでは、僕たちスタッフがチームとなり、それぞれの患者さんに合った生活支援を考えています。「あなたが望む暮らしを実現するお手伝いをする」という信念を胸に、これからも患者さん一人ひとりに寄り添っていきたいと思っています。