[一語一会の種 #9] Nuclear Fusion
Nuclear Fusion: 核融合
現状では,原子爆弾や原子力発電の主な仕組みは,核分裂というものだ.
我々の身の回りにあるものはすべて原子からできている.そしてその原子は,基本的には陽子,中性子,電子から成る.
(もっと細かく見るとクオークにたどり着くがここでは割愛する.)
その原子には種類があり,それぞれを元素と呼ぶ.鉄や銀や金のように重い元素もあれば,水素やリチウムのように軽い元素もある.重い元素はその原子中の陽子と中性子の数が多く,軽い元素は少ないのだ.
核分裂とは,重い元素の原子の原子核が分裂して,軽元素になっていく過程のことだ.例えば,核爆弾や原子力発電で使われるウラン235はセシウム137とルビジウム95またはヨウ素131とイットリウム103に分裂する.(別に中性子がいくつか出るので数字を足しても質量数は合わない.
(参考:【Q&A】核分裂でできた物質の片割れはどこに? - Case#3.11 地震≫原発≫復興 科学コミュニケーターとみる東日本大震災 (jst.go.jp))
一方,核融合とは,軽い元素の原子の原子核が衝突して融合し,重い元素になる過程のことだ.例えば,水素には陽子が一つの普通の(?)水素,陽子一つと中性子一つの重水素,陽子が一つと中性子が二つの三重水素がある.このうち重水素と三重水素を衝突させると,融合して陽子が二つ,中性子が二つのヘリウム原子になる(余った中性子は放出される).この時莫大なエネルギーが放出されるということだ.
(参考:誰でも分かる核融合のしくみ | 核融合が起こるとどうなるの? - 量子科学技術研究開発機構 (qst.go.jp))
核融合発電が実用化されれば,エネルギー問題がほぼ解決されるということも言われるくらいなのだ.というのも,核融合発電は核分裂による発電と比較して問題が少ないからだ.
核分裂を利用した原子力発電では放射能レベルが極めて高く処分に人間にとっては永遠といってもいいような時間がかかる廃棄物が出てくる.しかも,現在の通常の原子炉では,福島の事故のように最悪の場合は連鎖反応による事故も考える必要がある.
一方で核融合を利用した発電では,核融合そのものの過程ではそのような廃棄物ができないうえに,連鎖反応が起こらないので,それによる事故は起きない.
その核融合発電の実証実験施設として,フランスに建設中のITERという核融合炉の国際プロジェクトがある.この核融合炉の建設には日本の高い技術が必要不可欠で,かなりコアな部分の技術も日本が担っているものも多い.
その点では,日本としても注目していくべき技術であることは十中八九間違いないだろう.世界的にもベンチャー企業が取り組みだしている中で,日本としても遅れをとらないよう,向き合っていくことを期待して,今回は筆をおきたいと思う.
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