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医薬行政と薬剤師との関係がなぜこうなったのか

医薬行政への不満というものは、常にあるのだろうが、ここ数年、昔とは異なる現象が起きていると思う。

薬局のみに焦点を当てた個人的な意見としては、その原因はチェーン化と寡占化が進んだことによるものではないかと考える。

チェーンの寡占化が進む以前、というかその寡占化のプロセスの中では、地域の職能団体支部が中心となり、行政の出先機関のように、細かな対応や取り組みが行われていた。

要するに地域の支部が、連絡網として機能していたのである。
薬事行政の機能を守らせるために、その組織はしっかり機能していた。(と思う)

しかし、大手チェーン調剤、特に当時は少なかった、ドラッグ併設の面薬局というものが進出することで、職能団体は驚異を感じたのか、あからさまな入会拒否もしくは、それに近いハードルなどを設け、大手の職能団体への加入を長年にわたって拒んできた。

具体的には、地域の中核となる病院からのFAXをチェーンには送信しないということも非常に多かった。これはポイント事件でも同様であった。
今でもクソ田舎に大手ドラッグストアなどが出店する場合激しい抵抗にあう場合もある。

これらを20年近く続けた結果、職能団体の組織率は大きく下がり続けてしまった。
自分らを仕事を守るために戦って来たのだろうが、それで自分らの利益は守られたのであろうか?

ご承知のとおり、医薬分業率はこの間に、右肩あがりで伸びてきてもはや天井圏である。

その結果が、今の医療行政、薬事行政のやり方につながっていると思う。

詳しく書くと、
チェーンの寡占が進む以前は、地域の支部が地域の薬局を束ね、電話連絡網やFAX、支部の定例会などで行政からの通達を徹底させていた。

また、監視組織としも機能しており、「あそこの薬局がフェンスを取り外した」などの、通報機能もしっかりと生きていた。
相互監視(隣組組織)が機能していたのである。

当時はインターネットによる情報のやり取りはまだ主流でもなく、FAXが最強の情報伝達手段であった。
これらの、電話やFAX網が全ての情報を担っていたのである。

知りたくてもそれ以外知る手段はないのである。

そのような形で、大昔は地域の職能団体の支部がしっかりと情報も含めた統制をとってきた。

しかし、2020年代、現代はどうだろう。

職能団体の組織率は低下し、支部からの情報を当てにしている薬局はどの程度だろうか。
もちろん、個人経営や小さなチェーンなどは今でも薬剤師会からの情報を唯一の情報として重宝しているのだろうが。

しかし、大手ではどうだろうか。
数百店舗、1000店舗以上の超大手調剤やドラッグストアでは、支部からの情報を活用しているだろうか。否である。
保険薬局協会やJACDSなど、業界団体がしっかり機能している。

そうは言っても、実務実習や、地域活動など必要な情報は地域支部からの連絡は最低限活用しているだろうが。

今回、SNSでも賛否が出ている(否の意見が多い)、3のロに対する評価の見直し(倍増)。

SNS上で、薬剤師らが素直に受け入れることができないのは、「行政や政治の失敗を末端である薬局の薬剤師にやら焦れば良い」という感じの受け止めになってしまうからであろう。

薬価低下に起因する流通不足。その尻ぬぐいを何年もやっている我々薬局薬剤師。
ブチギレるのも当然であろう。

大手調剤でもその流通管理に対して消費される時間や人件費は莫大である。

選定療養についての説明も当然時間と手間をかけている。
それらのことは、保険薬局協会(NPha)のアンケート結果である上記発表資料を見ればわかる。

ただえさえ、薬剤師の仕事量は減るどころか増えているのに、在庫管理も非常に難しくなった。
数年前までは自動発注が機能しており、データを送信すれば午後、もしくは翌日には全てが納品されていた。少なくとも、欠品がある場合は卸から電話が入り、それを教えてくれていた。

今は、普通に全てが納品されること自体が奇跡のようなものである。
こちらから電話で、在庫確認が必要なのである。
電話代もバカにならないと思う。

さて、脱線したのだが、
最近の薬事行政だけでなく、医療行政で昔と比べて特徴的だと思うのは、あからさまに国が「点数をコントロールする」ことで一方向に薬局を動かそうとしていることである。

地域支援体制加算や連携強化加算など、チェーンがこれらの加算に敏感に迅速に反応するので、薬局の役割を直ちに変更することができている。

本来は職能団体を通して、時間をかけて誘導していたのが、いまは点数を書き換えることで、国が直轄で方向をコントロールしているのである。
チェーンの本部機能が徹底しているので、大本営の意向が、店舗の存在する日本隅々の末端まで直ちに行き渡るのである。政策の反映が迅速になったのである。

これでは過去の司令塔であった職能団体の立場はますます危うくなる。

私がSNSでエビデンス、エビデンスと言うことで、エビデンスなんかでは変えられない、とよく言われる。しかし、今までは丸腰でエビデンスも提示せずに政治活動に繋げようとしていた。せめて、その丸腰をやめ、エビデンスという武器を持つことで政治を行政をいい方向に持っていけるのではないか?と考える。

私が今言いたいのはそれだけである。

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