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最終的に行き着くところは、「一人薬剤師」

以前(2020年10月)書いた、「一人薬剤師の意味」という記事を、完全に書き直しました。

書いた当時と、今との比較をしたところ、

コロナも挟んで少し時代も変わりました。

2024年の現在、調剤の外部委託などの議論も開始されているようです。

その中で、これからの薬局薬剤師は何を目指すのか、何を求められるのか?

を含めて、改めて考察を加えました。

最初の記事を書いたのは2020年。もう4年経ちました。


その間に、コロナ禍、外部委託の形だけの議論(実は進んでいない?)、医薬品供給不安、Amazonファーマシーの登場がありましたが、薬局薬剤師を囲む環境は、医薬品の手配に絡む、無駄な仕事が増えた以外、実は「大して変化していない」ように見えます。あれだけ、「対物から対人へ」と言われてきましたが、実は「対人業務」が適切に定められてこなかったのです。「対人、対人」を言い続け、「対物」をおろそかにしてしまい、医薬品供給不安を起こしてしまった行政は、以前よりも「対物から対人へ」を強く言えなくなったのが少し、滑稽ですね。

さて、「対物から対人」、この点を根拠を提示させて、AIに考えさせると、下記のように現時点では適切な答えを導いた。

確かに、医療行政において薬剤師の対人業務の明確な定義は存在しますが、その内容は時代とともに変化しています。主な対人業務として以下が挙げられます

薬学的管理:患者さんの服薬状況を確認し、適切な薬物療法を支援する
在宅医療への参画:在宅患者さんの薬学的管理や服薬支援を行う
医療機関との連携:処方医との情報共有や処方提案を行う
健康サポート:OTC医薬品の選択支援や健康相談に応じる

しかし、これらの業務の具体的な実施方法や評価基準は必ずしも明確ではなく、各薬局や薬剤師の裁量に委ねられている部分が大きいのが現状です。そのため、「対人業務」の定義が適切に定められていないという指摘は妥当と言えるでしょう。

これらの文書では、薬剤師の対人業務について言及されていますが、具体的な定義や評価基準については、まだ発展途上の段階にあると言えます。

厚生労働省「薬局におけるかかりつけ機能に関するガイドライン」(令和元年12月)https://www.mhlw.go.jp/content/000580848.pdf
日本薬剤師会「薬剤師の将来ビジョン」(平成25年3月)https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/activities/20130326_1.pdf
厚生労働省「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」報告書(令和3年11月)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000855454.pdf

このように、定義はされているのだが、時代ともに変化しており、なにより評価基準が明確ではないために、「対人業務」がはっきりしないのかもしれない。
逆に「対人偏重」がスムースに進むことで薬剤師の職能が高められたのか?というと、そうではないと思う。

現に、ワクチン問題でもギリギリのところで薬剤師によるワクチン接種は認められなかった。

国が本当に薬剤師の「対人業務」を推進し、職能を高めるためには、この議論はもっと進める必要があったと思う。もちろん法的な問題をクリアできなかった部分も大きかったが、本当にやるつもりなら、コロナがある程度終息した今でも議論は進めるべきだったと思う。6年制卒の薬剤師には、それを行わせる土台はあるのではないか。

これらの行政、国が目指す薬剤師像、薬局像を、いつもいつも、振り回されながらも必死で追いかける企業(主にドラッグストアの薬剤師)が、これから必然的に求めるようになるものは、

やはり、「一人薬剤師」というスタイルであろう。

「一人薬剤師」というキーワードに嫌悪感を示すのか、それとも、これが薬剤師の職能を高めるキーワードになると考えるのか。

これは間違いなく後者の考えを持てる薬剤師が生き残っていくだろう

以前の記事、

でも、薬剤師数と薬局数、処方箋枚数を用いて検討をした。
その際のデータ、として下記の表を用いた。

https://note.com/kusoyakuzaishi/n/nd77009f178a5 より再掲

2000年から薬剤師数は約1.5倍に伸びたが、薬局数は1.24倍だ。
薬局数の2000年から2005年では1.06倍だったのが、2015年から2020年の間の伸び率は1.03倍程度だ。今後これが頭打ちになる可能性があり、これからの調剤薬局の新設は厳しいだろう。特に個人だと投資も回収できないし、医薬品も入手できなくなる可能性もある。結果として減少に転じる可能性もある。

これらのデータを用いて考えると、現在のところは薬剤師数と薬局数が一応は増えているので、薬局に勤める薬剤師も増えていると考えることができる。
そして、推測値ではあるが、一人当たり処方箋枚数も減少傾向が示されている。
なので、一人薬剤師が増えているというとは言えない

https://note.com/kusoyakuzaishi/n/nd77009f178a5 より再掲

一人当たりの薬剤師の処方箋枚数が減っている、ということが事実ならば、これは給料が減っているとも言えるだろう。実際、街中の「調剤薬局」の給与は減っているのは周知の通り、新卒も中途も同様。

論文ではないので、厳密な相関や検定を用いるつもりはないが、
一人当たりの処方箋枚数の減少と、薬剤師の給料は関連していると思うし、そう考えるのが一般的であると思う。

その上で、もう一度、「一人薬剤師論」を考えてみようと思う。

以前の、記事でもこれは述べたが、
現在、一人薬剤師環境には「事務なし完全一人環境」や「薬剤師1人と事務員1から2名」などがあると思います。

前者は大手ドラッグストアのドラッグ併設店舗や大手GMS内の調剤部門での面対応の、「オープン初期」が中心ではないでしょうか。1日10枚から多くて15枚くらいでしょうか。面は処方箋単価が高いものが飛び込んでくるので,その時期の仕事はかなり大変だと思います。スタッフが増員されるまでが大変でしょう。

後者はクリニック門前等で、新規オープンから、患者が定着し安定する頃までのモデルでしょうか。

1日40枚程度を想定しています。それ以上になると業務的にも、書類的にも薬剤師の増員の検討が必要でしょう。

ただし、40枚ちょうどの時点で薬剤師を増員してしまうと、同じ時間を働く場合、一人当たりの処理枚数が単純に20枚となってしまい、経営的には現実的ではありません。これが個人の薬局だと難しいところで、大手の薬局やドラッグなら「応援」という形で人件費を適正化できるのです。

(これが薬局が生き残るための強みですかね、人件費の最適化。)

今回は後者のタイプ(クリニック門前の新規開業時など)での一人薬剤師環境についての検討です。

だれでも「一人薬剤師」環境というのは不安があることと思います。

若ければなおさら不安です。

「1日平均40枚まで薬剤師は一人いれば調剤可能」

処方箋の重さにもよりますが、有能で信頼できる調剤事務スタッフがいれば可能でしょう。

0402通知以降、薬局における自由度は確実に広がりました。
https://www.mhlw.go.jp/content/000498352.pdf

「薬剤師しかできない仕事」と「薬剤師以外でもできる仕事」

皆さんの薬局でもしっかり線引きを行ってきたでしょうか?

少なくともピッキング作業は薬剤師の仕事では無くなりました。

その部分こそ事務員や調剤補助をしっかり教育して活かしてあげればよいです。

このような「時代の流れ」は確実に来ていて、今まで通り、

「一人薬剤師は嫌だ」とか言っている場合ではなくなったのです。

信じられないかもしれないですが、ピッキングしかしない薬剤師も以前はいたでしょう。患者さん相手の投薬では「使い物にならない」薬剤師もいるでしょう。また、むやみに理由も明確にせず「一人は嫌だ」という薬剤師もいるでしょう。

いま、薬局企業の内部留保は経済界だけでなく国からも狙われています。株主からはさらなる効率化を求められて、効率よく資金を回転させることを求められています。それだけではなく、国からも地域の高齢者を支える対策を求められているわけです。結局はここなのです。会社からはカネのため、国からは地域貢献、地域包括ケアの完成。
そのために、地域連携加算など、あからさまな加算が登場しました。
コロナ対策もあり行き過ぎもあったので、若干の調整はされつつも今後も地域連携に係る加算は続けるでしょう。

結局それらのしわ寄せは「現場が引き受ける」わけですよ。

言い方は悪いですが、会社や組織のマネジメントは現場から搾取することで自分の成績を上げます。部門や地区の成績があがり、会社の利益が増える。それは株主やオーナーの意向に従っているだけです。

それに対抗して現場を守り、適切に機能させるには、きちっとした「現場の組織化」をする必要があります。薬剤師が、少人数でも「回せる現場」を作らないといけない。
「40枚規制が守ってくれる」なんて、考えていたら、すぐに戦力外になってしまう。大手には代わりの薬剤師は簡単に入ってきます。

ではどのように、現場を作っていけばいいのでしょうか。
それはやはり「組織化」でしょう。

少人数でも「組織化」は可能です。

「組織」といっても、大病院の調剤所や規模の大きな薬局などのほかに、街中のパパママ薬局(死語)や、ドラッグの併設の完全面処方など、規模は様々だと思います。

大組織では自分が指揮命令系統のトップになり、的確な指示や命令を出す必要があります。もしくは給料は安いが、指揮命令系に従う側の薬剤師に
なる方法もあるが、これは今後かなりリスクが高くなる。

小さな組織では、指揮命令を出すだけでは仕事は動きません。

自分が動きながら指揮命令を行う必要があります。

また、少人数組織において、きちんとした組織化をしていくためには「薬剤師の人を引き付ける能力」が必須です。

自分についてきてくれるスタッフが必要です。

そう、一人薬剤師環境にこそ、コミュニケーション能力が必要です。

一人薬剤師になるには、コミュニケーション能力が必要なのです。

この場合のコミュニケーション能力というのは、「仲良くできる」能力というよりも、引っ張っていける、ついて来させる魅力みたいなものだと思います。

ワンマンでいい、ということではありません。

綺麗事になってしまうかもしれないですが、この薬剤師さんについていきたいと思われるような仕事ぶりや個性、魅力が必要なのです。

どうすれば、そのようになれるのか?は、また別の記事をお読みください。

大きな組織だと、トップがクソでも自動的に組織はできてしまっているのでそれでそれなりに機能するのです。

一方で、クリニックや医院の組織形態はどうでしょうか。

少人数組織がきちっとできてますよね?

一人の医師(院長)を頂点に、数人の看護師さん、事務員さん。

この組織で適正に運営され利益を出していると思います。

これと同じ考えは薬局には通用しないのでしょうか。

え?一人薬剤師だと危ない?危険?怖い?

そうですか、まあそれもわかりますけどそれは10年前までの考えですね。

一人薬剤師だと、危ない?それはあなたの経験と能力が足りないからはないでしょうか。

会社のマネジメントは「現場から労働力を搾取するのが仕事」と言いました。

適正に「搾取される」ために、現場を守るためにも適正な「組織化」が必要です。

医院やクリニックのように薬剤師を頂点とした小規模な組織を作り上げること。

ヒントはやはり開業医の先生の姿にあると思います。

自分(薬剤師)を中心に、調剤事務(調剤補助)さんらが(医院で言えば)看護師さんのような役割を果たし、薬剤師(自分)の右腕となり動いてくれるのである。

一人薬剤師の環境においては、薬剤師ひとりでやれることは限られます。

対人業務、対物業務と、流れはヒトとモノを分けようとしていますが、薬局における対人業務はまだまだ、これから先もしばらくは良くも悪くも「投薬」が業務の中心であることは変わりはないと思います。患者さんの相談に乗りつつ、安全に薬を飲んでもらうことだと思います。

オンライン服薬指導も、これほど普及しないのには、なにか原因があるでしょう。

IOTやスマートフォンがこれほど普及しても、オンラインで薬をもらう人というのは、まだまだごく少数です。(皆無と言っても良いのではないかな)
薬剤師から直接もらいたい、という患者さんの方が多いと思います。

私が「一人薬剤師はクリエイティブだ」という理由は

この組織化の点にあります。

「一人薬剤師」の可能性は無限大です。
皆が、一人薬剤師として、「院長を筆頭にした医院の小規模組織のようなモデル」を作り上げることができるようになれば、職能だけでなく、地位や、給料もそれに応じたものになると思います。

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