出会い
人を下に見る、バカにする人には本当の出会いはない
なんか、やたら人をバカにしたり見下したりする人がいるけど、
バカにする理由は、仕事ができないとか、なんとなく嫌いとか、
いろいろあるのかもしれないけども、
人を見下すことで、大変な損をすることがあるという実例を個人的経験から示したい。
以前、Twitterでも何度か言ったけども、
何年か前に、大手製薬会社(外資系)を、病気(がん)のため、
早期退職し、薬局の薬剤師として働き始めた人がいた。
60歳手前くらいだったと思う。
弊社の他の店舗に入ってきたが、当然調剤を行うのは初めてである。
一応、その店で半年くらいトレーニングをして少しは投薬もできるようになった。
しかし、個性が強く、プライドも高く、その結果、他の薬剤師と喧嘩をしてしまうなど、
多少素行に問題があり「扱い難い」人材だったらしい。
そのおっさん薬剤師を、私の薬局で預かることになった。
(こういう依頼ばっかり、、、)
男同士、わしもおっさんなので、おっさんの立場も分かるので興味本位で受け入れた。
仕事はまあ、可もなく不可もなく、仕事を与えて、やってもらうという形だった。
当然、叱ったりもしたけど、ミスを指摘する、それ以上のことは私は言わなかった。
彼も普通に、お調子者であるのだが、仕事はやってくれた。
世間話も良くしたのだが、彼は、自分の専門の薬の知識はすごかった。
メーカー時代は、主に大学病院の循環器を担当していたらしく、その辺の知識、最新のデータなどを持っていたので、いろいろ、教えてもらった。
彼の仕事がら、大学病院の医師に英語論文を紹介したりすることも多く、メーカーの学術の仕事もしていたのことで、文献を引っ張ってきてその解釈を述べたり、まとめたりする早さはすごかった。
「え?そんなことも知らないの??」と半ば煽ってきたりしつつ、いろいろ教えてくれた。
調剤を教えていた私への恩返しのつもりで、自分の持つ知識を私に与えてくれたのだろう、
あるとき、日薬か保険薬局協会かどこかに演題を出さなくていけなくなり、そのデザインを考えることになった。ネタは決まり、統計解析はエクセルで行うつもりだったが、そこに彼が口を出してきた。「解析にエクセルなんてダメだよ、笑われるよ」と。
じゃあ、どうすんのよ?
検定くらいエクセルでできるじゃん?って言い返したら、Rを使いなさいと。
R?なにそれ?という感じで、その当時の自分は統計解析なんてわからない、
「統計ソフトは高い」というくらいの知識しかなかった。
Rっていうのをネットで調べてみなさい、と言われたので調べた。
なるほど、これは面白そうだ、そう思いしばらくはRについて勉強をした。
それか、私とRとの出会いである。
(薬剤師としては)使えないという、レッテルをはられたおっさん薬剤師から教わったのである。
そのおっさん薬剤師は実は、当時「論文不正事件」で外資系のメーカーが吊し上げられる直前に退職してきたのだが、医師の論文の「手伝い」という仕事を行なっていたのだ。
お察ししてほしいが、お手伝いをしていたのだ。
それ以上は言えない。
その論文のプロから統計解析のための道具を教えてもらったのだ。
それがなければ、私は査読つき論文をこの世に出すことはできなかったのは間違いない。
大学院にも行かなかっただろうし、行ったとしても統計ソフトなんて使えなかったかもしれない。
その、仕事のできない薬剤師のおっさん(薬剤師しての薬局での仕事の評価は、そうなのだろうが、その人が何十年取り組んできた自分の仕事は、自分よりも遥かにレベルの高い仕事をしてきたのである)
人間、紹介では出会えない出会いがあるのであある。
どんな人からでも、教わることはある。
人を見下し、ばかにしていると、損をしますよ。
人を生かせる人間は、自分も生かせるのです。
もちろん、その逆もあり得るでしょう。
出会いというのは、奇跡なのである。