全宅ツイ不動産チンパンジー情報 第89号
【特集 ①】 2022年J-REIT市場を振り返る
デベ夫人(以下 デベ):約1年半ぶりのREIT特集です。前回の特集のあと、ついに業務でもREITを触るようになりましたが、あの時の基礎知識のおかげでなんとかクビにならずに済んでますww
アンニュイ:ニッチな内容だったと思うので誰も読まないんじゃないかと心配してましたが、少しはお役に立てたならよかったです。再登板の機会まで頂いて、ARES(不動産証券化協会)から表彰される日も近い。(嘘です、見つけても怒らないでください。)
デベ:J-REITって結局なんなのよ?は、まずこちらからどうぞ!
・ロシアに翻弄されたREIT市場
デベ:今年もあと2ヶ月で終わろうとしていますが、2022年のREIT市場についてお話しできればと思います。市場開設から21年になりますが今年はどんな1年でしたか。
inzai:一言で表すと、これまでの歴史と比べるとJ-REITの底堅さが目立った一年でした。J-REITってミドルリスクミドルリターンと言われつつも何だかんだでマーケットの変化に弱かったのですが、今年に限っては、金利上昇や株安の影響をほとんど受けなかったのが正直驚きでした。
デベ:東証REIT指数も安定してましたね。
リアル世界観(以下 世界観):年初の下落で拾っていればほぼトントンですね。
inzai:ここ数年、そういう価格の底堅さが続いていたのですが、資本市場に40年ぶり、50年ぶりの逆風が吹いても動じなかったのは、やっとJ-REIT関係の努力が報われたと目頭が熱くなりました。
世界観:夏場までは同じ印象ですが、9月末から景色が変わった気がします。REIT市場は長期的にP/NAV1倍以上で推移しますし、今年に関してもP/NAV1倍割れでリバーサルする傾向にありました。
inzai:1850ptから1900ptくらいの水準ですね。
世界観:今だと1,900をちょっと上回るぐらいですかね。
世界観:それが今(10/21終値)時点で1,862.75ptとP/NAV1倍割れの水準で落ち着いてしまっています。この「言うてもP/NAV1倍で反発するやろ!」と言う共通感覚が崩れてしまっているのが少し違和感と怖さを感じます。
デベ:背景にはどんな要素があるのでしょう?
世界観:金利上昇とPO(REITの公募増資)の増加だと思いますね。
デベ:たしかにPOは増えていますよね。
世界観:今月、物流だけでアドロジ、地所物流、GLPですからね。少し需給を緩めてしまいました。あと、金利上昇はずっと言われてましたが、9月末のタイミングでREITが下がったのはコロナショックのトラウマが少しよぎりました。
inzai:物流REITは通常、半年か1年毎にPOするのに、今年の前半はウクライナショック、金利ショックもありみんな見送った分、まとめて来た感じありますね。
世界観:9月末の下落は債券の金利上昇でやられてる金融機関がリスク調整のためにREITを投げ売りした、という見方もあるようです。
デベ:ぜんぶ、ロシアがわるい!!
inzai:いや、ほんと、ロシアが全てですよ!
デベ:REITのみならず金融市場全体がプーチンのおっさん1人に翻弄されてると。
世界観:本当に全部ロシアが悪い。インフレ退治の金利上昇も、プーチンがいらんことしなかったら少しはマシだったかもしれないですし。コロナショック時も金融機関が決算前に損切りのために売ったので、少し方向性が似ていると言う人がちらほらいますね。だから次の3月末も同じことが起きると。
inzai:プーチンはロシア国内では穏健派という話もありますが、いずれにせよ、いまマーケットが心配している材料がまだ半年ほど続くかもしれない恐怖感はあります。
世界観:J-REITの歴史上、そこそこの期間でP/NAV1倍割れを許容したのはリーマン、震災、コロナの3回だけなので、ここまでP/NAV1倍割れが継続するのは割安と思いつつも、少しトラウマがよぎるという感じです。
inzai:あと、そもそもNAVと言うのは、鑑定評価額を反映したREITの価格のことで、鑑定評価額が上がると、当然NAVの水準も上がります。21年末時点のP/NAV倍率1倍は1,812ptだったのに8月末時点で1,918pt。東証REIT指数がその分上昇するのは当然っちゃ当然なのですが、ここまで東証REIT指数が下がると言うことは、マーケットは海外同様に日本の不動産も下がると思っている可能性もあります。7月以降も鑑定価格が上がってる国は日本だけなんですよね。
アンニュイ:今年はどうだろうな...アセットによって置かれている状況は違うけど、いよいよ限界を試されるときという感じですかね。
デベ:アンニュイさんは中の人としてどう感じましたか?
アンニュイ:僕は金融全体の動きのような難しいことはわからないタイプの中の人なので、NAV割れの話は、これからは物件のバリューが下がっていくよね、というマーケットの認識なのだと理解してました。
inzai:中の人からすると違和感ありますか?実物不動産市場はまだまだ強いし、円安で海外投資家はまだ買うじゃん?という感じ?
アンニュイ:正直に言うと、僕としてはまあそう思われてもしょーがないないよね、という感想ですw
inzai:流れされるままに。
アンニュイ:もはや鑑定価格が上がっているのもキャップレートが下がっているからというだけの話なので、それは物件の収益力とは関係なく、円安を違う形で鑑定価格に反映させてるだけなんじゃないの、という見方もあります。
inzai:そこは頑張ってくださいよ!投資口価格は安いんじゃないかってシグナル出してください!
アンニュイ:足元の感覚からすれば安いんじゃないですかね。今のところすぐに鑑定価格が落ちるような感覚は持っていません。ただこれを3年後、5年後と見たときに投資家サイドがどう評価しているかという話で。それがネガティブなんだとすれば、中の人が、プラスのメッセージを出せるように結果で示していくしかない。そして結果というのは、やはりリーシングです。
inzai:こういう時、中の偉い人ってどういう経営方針になるんですか?リーシングと言っても稼働率と賃料のバランスになると思うんですが。
アンニュイ:仰る通りで、バランスなんですけど、今は投資家サイドも特に稼働率の優劣に目がいっていると思うので、稼働重視ですね。
デベ:少し前までは、鑑定評価を保つために稼働率よりも賃料目線が大事だった気がしますが、局面が変わりましたよね。
アンニュイ:例えばオフィスについていえば、各REITとも「言うてそこまで稼働は落ちないから!大丈夫だから!(震え声)」と言い続けていたのが、どうやら言われていたよりは厳しそうだというのが、明らかになりつつある状況だと思います。
世界観:リーシング、セクターによっても違いそうですし、タイプや立地、スペックでも優勝劣敗のつき方がすごいですね。各リートの稼働率見通しも結構違いますし。
デベ:セクター別の動きを見ていきましょうか。前回の全チンがちょうどオフィス特集だったので、まずはオフィスから参りましょう。
・今後も苦戦を強いられるオフィス
世界観:全チンでも「湾岸とか川崎キツイわ!」って話がありましたが、REITも全くもってその通りですね。
アンニュイ:稼働がそんなに落ちないと言われていたというのは、各REITがそうIRで言っていたという話で、前回の全チンのように賃貸オフィスマーケットを直に触っている人の感覚とは別の話です。
inzai:全チンのフリーレント10ヶ月の話はかなり衝撃でした。
アンニュイ:ああ、やっぱりそういう感覚なのですね
inzai:REITでそこまでフリーレントを付与している話は聞いたことないですね。
アンニュイ:中の人間からすると、「物件によってはまああるよねー」という感じで違和感なかったと思います
世界観:REITだと最近聞いた話ではFR6(フリーレント6ヶ月)を普通に許容し始めたとか
inzai:REITは賃料下げると鑑定価格が下がっちゃうこともあり、お二人が仰ったようにこれまで稼働優先じゃなかった。なのでFR10という事例を聞かなかっただけかもしれませんが。
デベ:それは大いにありますよね。
アンニュイ:今はどこも、期末時点の稼働率が何%になるかを、めちゃくちゃ意識してリーシングしていると思います。
世界観:オフィスREITの稼働率見通し、今年は全く当てにならなかったですねw
inzai:オフィスは短期的にも長期的にも厳しいですね。
世界観:個人的にはジャパンエクセレントの盛大な外しっぷりが衝撃でした(22/6当初予想93.6%→実績90.8%)
全宅ツイにご感心ご興味いただきありがとうございますウホ。皆様のご支援のおかげで楽しい企画が続けていけます。これからもよろしくお願いします。