鼻穴直下型ニキビの猛威
朝起きて顔を洗いに行く。洗面台にて、己の寝ぼけた顔面が鏡に映る。鼻の下あたりに視線が向かう。そして、そこにいる小さき者に向かって、私はこう叫んだ。
「鼻の下にニキビできてんじゃねぇかゴルァァァ。鼻穴直下型ニキビのお出ましじゃァァァァ。イヤだァァァァァ」
絶望である。阿鼻叫喚。
基本的に私のニキビは鼻の下にできる。より詳細に言うならば、上のイラストのように“鼻の穴”の真下なのである。つまり、鼻穴直下。
そういった理由から、私は鼻の下にできるニキビを『鼻穴直下型ニキビ』と命名している。そして、この『鼻穴直下』という響きがなんとなく気に入っている。四字熟語感があって、なんだか最高なのである。
と言っても、いくら『鼻穴直下』という響きが気に入っているからといって、鼻穴直下型ニキビに対する憎しみが消えることなど決して無い。憎悪の念は膨らむ一方である。
何故こうも頑なに鼻の下にニキビができやがるのだろうか。原因については高校生の頃から現在進行形で調査中であるが、残念ながら未だに判然としない。
涙を禁じ得ないったらありゃしない、である。
ついこの間までは、鼻穴直下型ニキビがあまり姿を現わさず鳴りを潜めていた。そんで完全に油断していたのだが、数日前ぐらいから突然姿を現わし始めてきた。
まるで今までは休息期間だったとでも言うかのように、凄まじい勢いで出現してきたのだ。なんとも無情な奴である。
鼻穴直下型ニキビの猛威に晒される度に、私の心身は大いに消耗してしまう。嗚呼、畜生。
だが、このまま憎み続けていてもしょうがない。憎しみは何も生まない、的な感じの事を耳にしたことがある。
鼻穴直下型ニキビに対して、己の心身を消耗させている余裕などない。他にもっとやるべきことがあるのだ。今の私がやるべきことは、憎しみの連鎖をここで断ち切ることである。
そして、ただ一つだけ、鼻穴直下型ニキビに対して感謝できることがある。最後にその感謝の意を表することで、鼻穴直下型ニキビに対する憎しみと決別しようと思う。
拝啓 鼻穴直下型ニキビ様
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