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高齢透析患者さんにポテトチップスが良い理由とは

先日、透析看護研究会で透析患者の腎臓リハビリテーションについての公演を聞いた。

高齢透析患者さんの介護予防は遅れていて現実的には深刻である。これからはいかに健康寿命伸ばすかが課題となるということであった。現実的に年老いてきた透析患者さんの目線で捉えた実情を、研究会のメンバーから聞き、自分の思考は遅れていることに気づきハッとした。透析の知識ばかりにこだわっている場合ではない。

高齢透析患者さんが幸せな余生を送るには、合併症予防に必要な食事制限より、まず栄養状態が優先。寝たきり予備軍であるフレイル・サルコペニアにならないようにすることのほうが大事です。

フレイルは、日本老年医学会が2014年に提唱した概念で、「Frailty(虚弱)」の日本語訳です。 健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のことを指しますが、適切な治療や予防を行うことで要介護状態に進まずにすむ可能性があります。

近年、透析患者さんのフレイル、サルコペニアのことが取り上げられることが多くなってきました。私の受け持つ患者さんの多くが、フレイル・サルコペニアの状態にあります。

まず簡単に調べるには握力を調べます。「ペットボトルをかけてほしいと頼まれたことはありませんか?」ペットボトルが開けることができなくなっている場合は、握力が15kg以下であり、多くはフレイル・サルコペニアの状態にあるとされています。そうなると徐々に日常生活を送ることが難しくなり転倒してケガをされるリスクも高くなります。

高齢透析患者さんにとって、先々の合併症より、まず今の筋力が低下しないように栄養をしっかりとることを優先しなければなりません。

「食事制限せずに、内服でコントロールする」。

高齢透析患者さんは、食事制限せずに内服でコントロールするべきとの意見を聞いて納得しました。若い頃リンが高い。カリウムが高い。食べ過ぎだ。飲み過ぎだと、透析スタッフの常套句のような指導を行ったことがある私は内心ギョッとしました。現実はそんなことより今、元気であることのほうが大事です。何日生きて、何日歩ける。これから何回、美味しいものを食べることができるか?年老いてきた自分の祖父母や両親に当てはめてみればわかります。

私は、長年の透析専門看護師を続けています。極力、食事制限の話はしないようにしてきました。必要な場合も、どれぐらいなら安心して食べれるかを伝えるようにしています。理由は、ただ食事は多くの人にとって楽しみだからです。

カリウムやリンが高いと、一方的に食べ過ぎだ。偏食だと言われても、実際の制限は患者さんにとっては辛く簡単なことではありません。

自分の親が年老いた透析患者なら、リンやカリウムが少々高くても食事制限をさせたくありません。食べなくなる方が心配です。落ちた筋力は簡単には戻ることはありませんから。
とにかくしっかり食べて動いて元気に暮らしてもらいたいものです。

特に、透析患者さんは透析を繰り返すことで栄養をロスしやすいので体重が減らないように「栄養が不足しないように」注意が必要です。そこで今回の講演の話に戻ります

ポテトチップス

フレイルの状態にある高齢透析患者さんの栄養状態を維持するのに、塩分が少なくカロリーが高いポテトチップスが良いという話「透析患者さんに良いわけがないと思いこんでいたが意外に塩分が少ない」。更には朝、フライドチキンを食べる、あさタン「朝タンパクするを取ることの略。透析患者さん考案」で痩せ続ける高齢透析患者が体重減少をおさえ一年以上元気だった話。

この春から高齢透析患者さんの腎臓リハビリテーションが保険適応になりました。オーラルケアにも力を入れるように推奨されています。

今回の話は、超高齢患者さんの事実に直面して分かってきたことです。これからは、ただ長生きするより、いかに自立した健康で幸せな生活を送ることができるかがテーマです。動けなくなって長生きしても幸せではありませんから。

私の受け持つ透析患者さんの言葉が浮かびました「ピンピンコロリ」が目標だ。動けなくなってまで生きていたくない。私のテーマはピンピンコロリだと。

患者さんは元気そうに見せようとされるし私達の介入が遅れることもあります。

ペットボトルを開けることが難しくなる前に、ポテトチップスを勧めてみましょう。もちろん自分の母や昨年から透析を受け始めた友人の父には真っ先に勧めるつもりです。

私は現在52歳、80歳まで生きるとすると残り6205日しかありません。人はいずれ寿命を迎えます。天寿を全うするまでいかに元気でいることができるか、その人のその時に適した価値のあるアドバイスができたらと考えています。

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