ドラマはあるのかい?
何かをしようとするたびに思い出すことがあります。
大学生の時に宮崎県日向市へ
自動車の運転免許を取りに行った時の話です。
3週間ほど自動車学校近くの宿に泊まり
短期間で免許を取る「合宿免許」だったのですが
宿で井村さんという男性と相部屋になりました。
当時、写真を学んでいた私は
課題提出のための撮影をしなければならなかったので
教習時間の合間をみて近所を散歩するのが日課でした。
ある時、私がいつものようにカメラを持って撮影に行こうとすると
井村さんが話しかけてきました。
「僕も一緒に行っていい?」
私も井村さんとゆっくり話がしたかったので
ついてきてもらうことにしました。
海岸沿いの道を歩いていた時のこと。
私がカメラを構えて撮影しようとすると
井村さんがさえぎるようにこう言うのです。
「今、きみが撮っている被写体にはドラマがあるの?」
「ドラマですか?」
「そう、ドラマがないと撮る意味がないでしょ?
そこから考えないとダメだよ」
当時、私は「なんとなく構図が面白い」という理由で
撮影をしていたので言われたことにピンときませんでした。
しかし、今、私が井村さんと同じ歳になって考えるとわかるのです。
井村さんは私にこう言いたかったのでしょう。
「君は何のためにそれをするのか?」
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