第四話「先入観」
アキは都会に勤めるアラサー。
仕事終わりの帰宅の途中、駅で電車を待っていた。
残業終わりのこの時間人はほとんどいなかった。アキはスマホでSNSを見ていた。
そういえば、よく「ガラの悪い人が実は優しくて自分の先入観を恥じる」といった内容のSNSの投稿を目にする。
皆が一度は恥じる「先入観」。なんとなく使っていた言葉だがそもそも「先入観」とはなんなのだろう。
アキは仕事で疲れてはいたが、スマホを眺めるのにも飽きたので考えてみることにした。
まず「先入観」とはなんなのか、アキはスマホで調べてみた。
先入観とは、前もって抱いていている固定的な概念。それによって自由な思考が妨げられる場合にいうとあった。
なるほど。アキはスマホを閉じた。
先入観と言う言葉は自分の自由な思考に障害が発生するような固定的な概念のことなのか…。少しややこしいが、思考を妨げられない限りは先入観とは言わないらしい。
つまり、先入観以外の自身が持つ固定概念があるということだ。
大枠の固定概念の中に妨げとなる先入観がある。
この先入観とならない固定概念を増やしていきたいものだ。
…ん?この固定概念は一体なんの働きをしているのだろう。
固定概念というのは、大きな盾のようなものだろうか。
料理から変な臭いがしたら料理がダメになっているから食べないとか、泥水は汚いから飲まないとか、自己防衛に特化したものが多いような気がする。
もちろん、この固定概念は育ってきた国、その土地の風土や家庭環境などのさまざまな要因で千差万別のものとなる。いわゆる常識と呼ばれるものだろう。
盾として使う分には、そればかりでないと知ったときに自分が恥ずかしいと思うか新たな学びと取るか個人の問題となる。
しかし、それを矛として他者に向けたとき大体トラブルとなってしまう。
自分の固定概念を相手に押し付けてしまうからだ。
「私がこんなに大変なんだから、手伝ってくれてもいい」だとか、
「何故、相手がこんなことをするのか意味がわからないから注意する」とかそういった言葉足らずが原因で諍いとなってしまう。
まず、例えの中の大変もこんなことも自分の主観であり固定概念だ。
相手に伝えなければ何も解決しない。
大変そうだから手伝うということも固定概念だ。「こう大変だから手伝ってほしい。」と伝えなければ人は動かない。
もし、何も言わなくても心が伝わる人と一緒になりたいなら自分と結婚するしかない。
極論だが、そうだど思う。
話が逸れたが、先入観とは人間関係を築くときなどに妨げとなるような固定概念の事で、それが減るといい感じになるということだ。
うん。それが知れただけで今日は十分だ。
電車がホームに滑り込んできた。
とりあえず、帰って1人で晩酌しよう。
今後の予定を思いついたアキは、少し軽い足取りで電車に乗り込んだ。