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ひきこもりだった夏

高校を1ヶ月半で行かなくなった。
なんだかこの高校には私の居場所があると思えなくて、苦しくて、次第に家に帰ると泣くようになった。居場所がないと思った原因は色々だった。スカートの制服が嫌だったし、先生たちは全然的外れなことばかり言ってくるし、体育の授業ではめまいがするし……些細なようで、その一つ一つが私には大きな出来事だった。学校に行かなくなるとすごくホッとした。
でも、心の休息を得ると同時に、不登校の後ろめたさや何もすることがない不安に駆られるようになった。特別好きなことがあるわけでもなかったから、ずっとスマホゲームとSNSに浸っていた気がする。家にずっといると何か行動する気力もなくなるから、余計に引きこもった。
8月は知り合いの方が予定のついでに私をドライブに連れて行ってくれたことが何回かあった。ひきこもり期の数少ない思い出だ。この頃にはもう休学していたし、いずれ退学することを心に決めていたので焦りなんかはなかった。8月31日も、頭の中の自分に「社会的弱者!」と言われながらいつも通り過ごしていた気がする。
この経験を通して、「苦しいことから逃げても完全に楽になるわけではないのだということ」を学んだ。程度の低い苦しさを新しく味わうようになるだけで、決して全てから解放されるわけではなかった。それでも、毎晩泣くことはなくなったし、すぐ逃げられたからトラウマはほとんどできなかった。いずれ必ず必要になる選択だったんだろうと今は確信している。
だから、もし、私みたいな状況でどうしようもなく涙が込み上げてくる子がいたら、やはり逃げるという選択を考えてみてほしい。逃げた後のことは逃げてみないとわからないし、まず環境がそれを許すかもわからないけど。逃げた先で、心にできた傷を回復することができれば、その選択に十分に意味はあるよ。そしていつか、立ち上がれる日がくる。そう私は思う。
ところで、引きこもりのまま約9ヶ月を過ごした私はどうしたかと言うと、また全日制に入学して、現在は高校3年生になった。学びは続けたかったから、進学を選択して受験勉強真っ只中。
そんな人間もいることを、心に留めておいてほしい。逃げた先でもがいていけば、どうとでもなることを忘れないでほしいから。
元引きこもりだった私より、かつての私とあなたへ向けて。

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