新しい畳・イグサの香
思い切って畳を新調することにした。と言っても『表替え』。6年ほど前に『裏返し』した畳は、あの世に旅立っていった猫ちゃんたちの爪痕やら、染みで情けない姿になっていた。
もう家の中で猫を飼うことはない。
心機一転、畳の『表替え』をしよう!
私の心が導いたのか、畳替えのチラシと、勧誘の電話が立て続けに。普通は勧誘の電話は警戒する。だが、この日は詳しく話を聞いた。
チラシの店にも電話で問い合わせる。
電話勧誘の店の方が良心的で誠実だ、と直感的に思った。
電話勧誘の店の所在地も電話番号も係員の名前も聞いていた。そして私の方から電話。その日のうちに見積もりに来てくれた。
高い方を勧めることもなく、値段と特徴を説明。「一番安いもので、じゅうぶんに立派な畳になります」と。
決心した。
私のウォーキングの時間に合わせ、翌朝、なんと8時前に職人さんが来てくれた。「畳屋さんは朝がはやいのですね」「もう8,時には動き出します」
それまで使っていた”イグサ風ビニールシート”を「使わないのなら私が持ってゆきます』と。大きなものを捨てるのは大変だ。助かった。
あっという間に6枚の畳を運び出し、「掃除はしなくていいですよ。全部、私がやりますから」と。
午後3,時過ぎ。職人さんが畳を持ってきた。
なんと電話をかけてから二日で完了。
表替えした畳は青々としてイグサの香がたちのぼってくる。
まるで忍者のように、手際よく、整然と畳をはめこむ。その動きに見惚れてしまった。
イグサの香りに包まれて寝る。いろいろな思い出が過る。今まであったこと、出会った人、理由は分からないが去って行った人のことなど……。
私の部屋。私の聖域。
いちばんお金をかけてきた。
廂のように板の間を増築した。壁紙も天井も張り替えた。
私の大切な空間。
すべて費用は、私が働いて少しずつ貯めた私の貯金から。この部屋に関しては夫のお金は使っていない。他人行儀とか、自分勝手とか、そういうことではない。
これは私なりの流儀であり、美意識なのだ。
私の部屋は私が作る!
その夜はとても楽しい夢を見た。目が覚めたら忘れてしまったけれど。