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今年も花に出会えた、世界は危機なのに

庭の梅が咲いた。世界は危機的状況なのに綺麗な花は咲いている。今年も花に出会えた幸せ……。

花を見ていると心が安らぐはずなのに、なぜか、今まで幾度も世界に危機は訪れていたことを思い出した。

小学5,6年生のころ、学校の「映画教室」で学年全員映画館に行った。見たのは『第五福竜丸』。ビキニ島におけるアメリカの核実験で、近くの海を航行していた漁船が核の灰を浴びた事件だ。

子ども心に怖かった。雨が降るとわたしたちは血相変えて校舎や家の中に逃げ込んだ。「原爆の雨だ」「濡れると頭が禿げる」「放射能で死ぬぞ」

子ども心に知った最初の世界の危機だった。

高校3年のころだったか。キューバ危機というものがあった。若い男性の英語教師が涙ながらに言った。「絶対に世界大戦を起こしてはいけない。世界の終わりだ。絶対に戦争はいけない」。私たちはしんと静まって先生の声を聞いていた。怖かった。もしかして世界は終わるかもと思った。

青春時代に感じた世界の危機だ。

大学生のころ、ベトナム戦争が激しくなった。ベ平連(ベトナムに平和を願う連盟)が生まれ、世界中でデモが発生。反戦ソングが生まれた。フランスの学生デモはものすごかったような記憶がある。

アメリカはベトナムの森林に枯葉剤を散布。森林を焦土となした化学兵器だ。

ベトちゃん、ドクちゃんと呼ばれる双子の兄弟が日本に来た。二人は枯葉剤の影響で体がくっついて生まれたのだ。日本で切り離し手術を受け、手術は成功。しかし、その後、1人は亡くなった。

もう50年ほど前のことだが、二人の痛ましい姿は今も私の目に焼き付いている。

あのころも、人類の危機を感じた。人類は絶滅するかもと思った。

ベトナム戦争でアメリカは化学兵器を使ったのだ。今は、ロシアが、化学兵器、核兵器を使うぞと世界を脅している。

両親、兄、姉から繰り返し聞かされた無差別爆撃の情景が、今、ウクライナで繰り広げられている……。

兄は言った。「結局、人間は少しも進歩しないんだ。信じられないよ。あの頃の状況が今再現されるなんて」

私は、この年齢になって世界の危機を感じることになってしまった。この危機を知ることなく、逝ってしまった両親は幸せだったと思う。父の最後の言葉は「ここは防空壕か」だった。「違うよ、病院だよ」というと安心したように微笑んだ。

綺麗な梅の花が咲いている。世界の危機も知らず暖かな日差しの中で咲いている。


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