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ミカンばっかり食べていた~

病室ですることもなかった時、ミカンばかり食べていた。手足が黄色くなるぐらい。

今、思うと、あの病院の最初の5日間の食事はとっても良かった。他の病院に入院したことはないから、比べられないけど。

後の五日間はそっけないつまらない食事。多分、献立を作る栄養士さんが交代したのだと思う。そうしか思えないほど差があった。

最初の流動食、きちんとひとつひとつお椀に入っていて、開けると、山芋を擦り流したもの、薄い味噌汁、ホウレンソウをお湯に溶かしたようなもの、葛湯だったが、美味しかった。

次の日にはデザートが出た。サツマイモのレモン煮、こんなに美味しい食べ物があるのかと思った。

ヨーグルトやゼリーも毎日種類が変わった。ヤクルト系が良く出た。ミカンの缶詰がちょこっと皿に乗っていたり、カボチャのペーストのお菓子が出たり。

大きな皿の銀紙を開くと白身魚の蒸し焼き、こんなふうにボロボロ崩して蒸すのか。美味しい!

どんな料理にもトリのミンチが散らしてあった。病人食ってこういう風に作るんだなあ、と感心した。

患者を少しでも楽しませようとする工夫と愛情が感じられた。食べるしかすることないから、嬉しかった。とくにミカンゼリーは。

ある日を境に、実にそっけない食事になった。カロリーとかはちゃんと計算しているのだろうが、手のかかった手作りのデザートは一切ない。牛乳が一本あるだけ。

どの料理にもトリのミンチなんか散らしていない。白身魚の蒸し焼きもない。厚揚げみたいなのを崩して煮てるだけ。

スモモのゼリーなんてないよ!

文句を言ったら罰が当たるけど、最初のころの食事が手をかけ、心を込めていただけにがっくり。

これは絶対栄養士さんが変わったのだ、と思った。

最初のころのかぼちゃやサツマイモを使ったデザートを懐かしく思い出す。

そして、ミカン、食べていいですよ、と言ってくれたドクターの声を。

食事には夢が必要だ。たとえ重病人であっても、流動食であっても、口で食べる限り、食事はロマンチックな夢を持っていなければならない、と思った次第です。

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