失くしたスカーフ

30年近く愛用したスカーフを失くした。
姉からのイタリア旅行土産だった。

手触りも
華やかな彩も
大きさも

やっぱり、イタリアよね、と感じさせる
素敵な、素敵なスカーフ。

バスの中で失くしたことに気付いた。
すぐ引き返し
歩いた道を辿った。

その日、自分が立ち寄った場所を
すべて歩いた。

自分の思い違いかも、と
一縷の望みをかけ
家の中や庭まで探し回った。

バス会社にも
ファミレスにも
遺失物届を出した。

私の分身のようなスカーフ。

今頃、どこでどんな目に遭っているのだろう。
人に踏んづけられ、最後にはゴミ箱行きになったのか。

しかも新年早々……

三日三晩、眠れなかった。

いや、違う。
あのスカーフは
私の厄をすべて持っていってくれたのだ……

今年が最高の年になるように
私の去年の厄をすべて持って
風の彼方に消えたのだ。

私の愛した素敵なスカーフ……
　　　　　　　　　　　　　　　終わり