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シロ

毎朝、顔を出す白い猫。正式な飼い主はいない。

この子の母親と兄弟二匹は里親が見つかり、幸せに暮らしている。
この子がなぜ取り残されたかというと、
妊娠している野良猫を
近所の猫好きの人と協力して捕まえ、
母猫を避妊手術に連れて行ったら診察室で大暴れ、
院長さんがやっと網で捕まえて、手術をしたら
この子がお腹に入っていたのだ。
男の子だった。

近所の猫好きの人と費用を出し合い、この子の去勢手術をした。
耳のカットがその印だ。
私は「シロ」と名付け、彼女は「えびす」と名付けた
だからこの猫には二つの名前がある。

彼女の勤めている事務所の社長が猫好きで、事務所で飼ってくれた。
その後、事務所の猫好きの社長さんが亡くなり、
私は大病を患って入院した。

人間にも様々な事情が生じる。

彼女の家には先住猫がいて、この猫を家で飼うことはできない。
彼女が与えてくれる食べ物でこの猫は外猫として
ひとりぼっちで生きていた。

猫はそもそも一人ぼっちで生きている生き物だ。
人間に近いようで遠い。
野生を残したまま人間のテリトリーで生きている。
思えば不思議な動物だ。

退院すると、この猫が毎日、顔を出してくれた。

食べ物が欲しいだけだとはわかっている。
でも、なんとなくうれしい。
「おお、シロよ。来てくれましたか」
と心の中であいさつしている私なのだ。

              おわり




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