新垣隆氏はペテン師を創造したのだろうか
「交響曲第一番HIROSHIMA」復活のドラマ 3
その日、私は‥‥‥。
記者会見を前にして、これから訪れることに怯えていました。
この場を用意してくれた神山典士さんや『週刊文春』の編集部の皆さんがあわただしくホテルニューオータニの控え室を出人りします。「すごい数だよ、報道陣」というささやき声が聞こえました。心臓に太い針が突き刺さるような痛みが響きます。
しかし、不思議なことに、私の中にはどこか落ち着いた気持ちもありました。
いつか必ず露見すると思っていた嘘が隠しきれなくなり、事実に向き合わねばならなくなったことに、ひるむ気持ちがなかったわけではありません。
また、テレビを通じてそれを自分からおおやけにするようすが全国に報道されることで、私自身の社会的生命は絶たれてしまうでしょう。音楽の仕事もなくなるでしょう。先のことなどまったくわかりません。
その一方で、これまでどんな親しい友人にも口をつぐんできたことをもう隠さなくてもいい、そんな無益な努力をしなくてもよくなったのだと思うことは、はかりしれない自由を私に与えてくれるようにも思われました。
もちろん数多くのかたがたにはかりしれないほどのご迷惑をおかけしてしまったことは間違いありません。身を拾てて、率直にお詫びを申し上げるほかないのです。
午後二時三〇分。会見が始まる時刻です。
この会見を目にするかたがたは、私の姿をどうごらんになるでしょうか。私のことばをどうお聞きになるでしょうか。
音楽という夢たちが連座することになったある罪を、皆さんはどうお考えになるでしょうか。
これまで体験したことのない、もちろん想像すらしたことのないステージが私を待っています。
私は立ち上がり、ドアに向かって足を踏み出しました。
交響曲第一番HIROSHIMAの復活のドラマ
『FAKE』 森達也
残酷なるかな森達也 神山典士
新垣隆氏はペテン師を創造したのか
佐村河内守氏はペテン師だったのか
華麗な舞った高橋大輔
ヴァイオリンのためのソナチネ
魂の旋律 古賀淳也
交響曲第一番HIROSHIMA 佐村河内守
天才とペテン師 神山典士
巨大な作品 野本由紀夫
21世紀の日本に可能な交響曲の姿 長木誠司
現代音楽への警鐘 池辺晋一郎
汚され、地に堕ちた「交響曲第一番HIROSHIMA」の復活を追跡する戯曲「ヴァィオリンのためのソナチネ」が《草の葉ライブラリー》より近刊。