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私はルイジアナで一本の樫の木の伸びゆくを見た  ウォルト・ホイットマン 長沼重隆訳

私はルイジアナで一本の樫の木の伸びゆくのを見た、           その木は全く独りぼっちに立って居て、枝から苔が垂れさがっていた、
仲間もなにもなく、樹はそこに生い立ち、歓ばしげな黒褐の葉を、物言うように、戦(そよ)がせていた、
そして、その無雑作な、物に屈せぬ、頑丈な様子は、私に自分自身を見る思いをさせた、
だが私は、近くに仲間もなく、孤独にそこに突立っていながら、どうして歓ばしげな葉を戦がしておられるかと不思議に思った。
何故なら、この私にはそれが出来ないのを知っているからだ、
そして、私は幾枚かの葉をつけた小枝を手折り、それに苔を少しばかり絡みつけ、
持ち帰って、自分の部屋の眼のつく場所に置いた、
それは私自身の親しい友達でもあるかのように、私に思わせる必要はなかった、
(何故なら、この頃、私は彼等のことより他のことは、殆ど考えていないと信ずるからだ)
しかもその枝は不思議な記念(かたみ)として私に残され、私に男性の愛を想わせている。
それでいて、その樫の木は、あのルイジアナの広広とした平地で、たった独りで、閃閃(きらきら)と輝やき、仲間も、愛人も近くにいなくとも、その一生を通じて、歓ばしげな葉を、物言うように、戦がせているが、
私は自分にその真似が出来ないことをよく知っている。

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青春と昼、老年と夜  ウォルト・ホイットマン
長沼重隆訳

おおどかで、溌刺たる愛すべき「青春」──典雅と、力と、魅力とにみちた青春よ、
君は、君の後から、おなじような典雅さと、力と、魅力をもつ「老年」の来ることを知っているか。
満開の壮麗な白昼──巨大な太陽と、活動と、大望と微笑の白昼、
「夜」はすぐその後に、幾百万の恒星と、そして睡眠と、さらに元気を取り戻す夜の闇を伴って続いてくる。

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老齢に寄する   ウォルト・ホイットマン
長沼重隆訳

あなたは、あの大海に注ぎ入るにあたり、雄大にして末広がりして、展開する河口を私に思わせます。

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