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「草の葉メソッド」に取り組むためのガイド


1  ラーナー(learner──学習者)はテキストの日本語を翻訳ソフトで英語に転換させ、自分の言葉(英語)を作りだします。テキストの日本文を正確に訳す必要はありません。テキストの日本文を独自に展開させて、まったく違った英語に転換してもかまいません。むしろその展開をすすめます。なぜならそれが自分の言葉を作り出すことですから。

2  現在の翻訳ソフトは相当進化しているが、いまだ開発途上の装置であり、打ち込んだ日本語がすべて正確に翻訳されてくることはありません。単文や短文は比較的精度の高い英文を打ち出してきます。しかし長い文章(重文や複文)は、混乱した英文に変換されてきます。そのときラーナーは、その長文を短文に分担してつなげたり、その長文と同じ意味をもつ翻訳されやすい文章に書き換えたりして、自分が表現できる英文を作り出す。テキストの文章とまったく異なっていてもかまわない。

3  その転換された英語が、正しい英語なのか、間違った英語なのかと思案したり危惧したりする必要はありません。「草の葉メソッド」の目的は、間違った英語を大量に話すということにあり、間違った英語こそ正解であるという思想によって組み立てられているのです。

4  翻訳ソフトでつくりだしたその英文をそらんじることが、ラーナーに課せられています。翻訳ソフトはその英文を音声によっても表現されています。その発音を参考にしながら、完全にそらんじてレッスンにのぞんでください。対話レッスンは、その英文を互いに伝えあうことからはじまりますから、この課題をクリア―していないとレッスンが成り立ちません。

5  レッスンは続いて対話編に入り、対話者はそれぞれAとBになって会話をします。ですからこの対話編の英文もまたそらんじておかねばなりません。本文のテーマをさらにふくらませ、フリートークではこのような話題も取りこんだ豊かな会話を展開してもらいたいという目的をもって編まれています。

6  この二つの課題を終えると、フリートークになります。テニスにたとえると、英語というボールを自由に打ち合うというレッスンです。対話レッスンは、飛んできたボールを即座に打ち返さなくてはなりません。日本語に置き換える時間などありません。日本語脳でプレーするのではなく、英語脳でプレーする訓練です。

7  対話は互いに質問を投じることによって展開されていきます。ですからラーナーは対話者に問いかける力、対話者から話を引き出す力、質問をつねにくり出す力を鍛えておく必要があります。たとえば対話者が船で世界一周の旅をしてきたといった話題を切り出してきたとき、「何日間の船旅だったのですか、どことどこを回ってきたのですか、費用はどのくらいかかったのですか、船上の毎日はどんな生活だったのですか、どんな人たちが乗りこんでいるのですか」などなど。会話を豊かにしていくのは、どれだけ多様で豊かな質問を発することができるかにあります。

8  対話レッスンは多数の人と対話できるように組み立てます。一回の対話時間を十分とタイム設定にすると、一時間のレッスンで、六人と対話することになります。最初は、互いにぎこちない、とぎれとぎれの、ぎこちない会話ですが、二人目、三人目と対話を重ねるたびにその会話が滑らかに自信をもった言葉を投じ合うようになり、滑らかにその会話が弾んでいきます。

9  《草の葉メソッド》には、学校や語学教室で教える先生という役割を担う人は存在しません。このメソッドに取り組むラーナーの一人一人が、彼らの英語を作り出す翻訳ソフトを常に作動して、このレッスンに取り組むラーナーと、会話のラリーによって英語の力を磨きあう場です。ですから《草の葉メソッド》では、ラーナーの一人一人が教師であり生徒です。

10 《草の葉メソッド》は、日本人同士が英語で話すためにつくられたメソッドです。明治時代にアメリカ人が野球を日本に持ち込みましたが、この野球を今日のように興隆させたのは、日本人が日本の野球を創造し、日本各地に広めていったからです。英語という言葉を日本の大地に根ずかせるには同じ道程が必要なのです。「草の葉メソッド」がめざすのは、日本英語の創造です。

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