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Web Magazine 「草の葉」
特集
チャタレイ裁判の記録
これが猥褻文書として糾弾されたロレンスの英文。あなたはこの英文をどのような日本語で紡いでいきますか。
Chapter2
He was a curious and very gentle lover, very gentle with the woman, trembling uncontrollably, and yet at the same time detached, aware, aware of every sound outside.
To her it meant nothing except that she gave herself to him. And at length he ceased to quiver any more, and lay quite still, quite quite still. Then with him, compassionate fingers. she stroked her fingers over his head, that lay on her breast.
特集
英語教育をコペルニクス的転換させる「草の葉メソッド」
この体系を根底から転換させるメソッドが登場しました。草の葉メソッドです。これを地道説英語教育体系と名付けましょう。それは白が黒になるような、夜が昼になるような、山が海になるような、天地真っ逆さまの百八十の転換です。文法英語教育禁止です。英語教師は生徒たちに文法を教えてはならない。英語の時間は生徒たちが英語のボールを打ち合うテニスコートになるから、英語教師はテニスコートの管理人という地位に下落します。
受験英語なるものは英語ではないから、問題集などさっさと投げ捨てなさい。英文を読むときは辞書を引きながら読んではいけません。意味が分からなくとも英語をそのまま読んでいきなさい。間違った英語はすべて正しい、だからデタラメ英語を恐れずにどんどん話しなさい。デタラメ英語を大量に話すことこそ、英語を話すことのできる基礎土台を作ることなのだから。
語学教師として日本に上陸してきたアメリカ人やイギリス人はすべて追放しなさい。彼らの存在は日本の大地に育っていく日本英語を踏みつぶしていく人種だから。当然のことながらこのメソッドには、アメリカ英語とイギリス英語の哀れな植民地となっている日本の英語教育の尻の穴に、ダイナマイトを詰め込んで吹き飛ばせといった過激で危険な思想がその根底に縫い込まれています。
特集
「草の葉メソッド」の入門編のテキスト。
英語に憧れ、英語にあふれるばかりの希望を抱いて中学校に入学してきた中学一年は一学期からすでに次のような英語が話せるようになる。
第一課 私はいま料理づくり燃えています
こんにちは、初めまして。私の名前は長田渚です。ナギサと呼んで下さい。私は品川に住んでいます。中学二年生です。私の家族は父と弟と私の三人です。母はいません。私が九歳のとき、父と母は離婚しました。母は別の人と結婚して、いまは千葉県に住んでいます。いろいろとバトルがあって、つらいことがたくさんありましたが、いまは三人で平和に暮らしています。
私の好きな学科は数学です。けれども関数のところでつまずいて、いまちょっと落ち込んでいます。二番目に好きなのは国語です。私の嫌いな学科は英語です。英語がよくわからないのです。
私がいま一番燃えているのは料理です。父と弟のために毎日作ります。私の夢はレストランをつくることです。それも日本ではなく、ニューヨークに。おっ、そうか、そのために英語はしっかりと勉強しなければいけないか、と反省しています。
対話編
A おまえが一番好きな食べ物は?
B カレーかな。
A カレーにもいろいろあれけどさ。
B ある、ある、カツカレーとか、エビフライカレーとか、コーンカレーとか、納豆カレーもあるよ
A まじかよ、そんなもんあんのかよ。
B おれ、食ったことあるよ。結構うまかったよ。おまえの好きな食べものは?
A やっぱ、ラーメンかな。
B ラーメンにもいろいろあるけどさ。
A ある、ある、豚骨ラーメンとか、味噌ラーメンとかさ、醤油ラーメンとか、おまえの好みはなにラーメン?
B カップラーメンかな。
A カップラーメン!
B あれってさ、お湯そそくだけでいいじゃん。
A あのさ、話ちがうけどさ、この渚って子の自己紹介って、おかしくない。
B どうして。
A だってさ、父と母は離婚しましたなんてさ、ふつう言わないよ。
B 言わない、言わない。
A それでさ、母は別の人と結婚して、いまは千葉県に住んでいますなんてさ。そんなことおれはぜったいに言わないよ。
B あっ、そうか。おまえんちも離婚してんだよな。
A だからさ、おれはさ、母子家庭だなんてぜったいに言わないよ。
B 言う必要ないんじゃない。
A 家のなかはもうぐちゃぐちゃになってさ、そういうことは言いたくねえよ。
B おれんちだって危ないよ、いつも喧嘩してるしさ。
A おまえんちは、ぜったい大丈夫だよ。父ちゃんも母ちゃんもりっぱだしさ。
B そんなことないよ、隣の芝生はよく見えるというやつでさ、けっこう荒れてんだよ、おれんちも。
A 子どもが一番傷つくんだよな。子どもが一番の犠牲者なんだよ。おれは大人たちに言いてえよ。もっとしっかりと生きてくれってさ。
B この渚って子も、すごく傷ついているはずだけど、なんか明るいよな。
A うん、性格が明るいんだよ。
B なんか前向きでさ。おれ、こういう子、好きだよ。
特集 1
沈滞した下町を復活させた地域雑誌「谷根千」
「三号雑誌にはなるまい、三年続けよう」という思いで創刊し、いつの間にかここまできました。しかしこの数年、継続できる最低ラインの七千部を割り、回復できずにいます。そこで、定期購読の節目である二年八冊を責任をもって刊行し、九十三号を最終号とすることにしました。
長く購読を続けてくださっている皆さま、本当にありがとうございます。もう少しです。ぜひ最後まで見届けて下さい。今後二年間、今までの資料を整理し、聞き書きを充実させ、精魂込めて「谷根千」を作ります」
特集 2
沈滞した町を復活させた山崎範子の世界
彼女の書く文章には鋭い切れがあり、その対象を捉える視線は深い。それでいて、その文章はあたたかく、読む者を幸福にさせる。彼女は上質のエッセイストとして、独自の世界を作り出していける才能をたっぷりともっているのだ。草の葉ライブラリーで間もなく山崎範子著「谷根千ワンダーランド」が刊行される。
特集 3
チャタレイ裁判の記録
果敢に権力に立ち向かい勝利をもぎとったこの羽矢謙一訳「チャタレイ夫人の恋人」は、絶版状態でいま手に入れることはできない。この勝利の書の復活を強くのぞむのは、また「チャタレイ夫人の恋人」の真価をこの訳がよく伝えているからである。翻訳者によって同じ作品がまったく異なった作品になってしまうものだが、この作品もまた伊藤訳と羽矢訳とではずいぶん違う。いま二者の訳を読み比べるとき、ロレンスの文体がつくりだすそのリズムや触覚や匂いや気配は、羽矢訳のほうがより深くかもし出しているように思える。羽矢がどのように「チャタレイ」に立ち向かったかは、その本の解説に書かれているので、この羽矢訳が数百年も生きる大木に成長していくように、その解説全文を「草の葉」に移植することにする。