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「草の葉メソッド」初級編

第1課  小学三年生の手紙が訳せない

オークランドでの短期研修ツァーに参加して、猛烈に悔しく情けなく恥ずかしことがあった。それはオークランドの小学校を訪問したときのことだ。三年生のクラスだった。そのクラスの子供たちは、福島の小学生たちに励ましの手紙を書いた。そしたら福島の小学生たちから返事が返ってきた。そのクラスの担任のエイダ先生が、その手紙をぼくたちに渡して、英訳してみんなの前で発表してほしいと言ったのだ。そのクラスを訪問したのは中学生の五人だったが、だれもその手紙が訳せなかった!
《げんぱつ》とか、《ほうしゃのう》とか、《ひなん》とか、《おせん》とか、《じょきょ》とか、《ふっかつ》とか、《こうじょうせんがん》とか、《きんしちいき》とか、《へいさ》とか、《そうり大臣》とか、《東京電力》とかでてきて、ぼくたちはその言葉(英語)をまったく知らなかったのだ。
なぜなんだ、なぜぼくたちは、福島の子どもたちが一生懸命書いた手紙が訳せないんだ。ぼくはそのことが悔しくて、情けなくて、猛烈に腹が立って、それでその日の夕方、みんなに言った。「これからエイダ先生のところにいって、あの手紙を借りてこよう。それであの手紙を全部訳して、明日のスケジュールを変えてもらって、あのクラスにいって、あのクラスの子供たちに、おれたちが訳した福島の子供たちの手紙を伝えよう。そうしなければ、おれたちは日本に帰れないよ」

対話編
A あたし、この作文書いた中学生の気持ち、よくわかるよ。福島の子供たちが一生懸命書いた手紙を一行も訳せなかったんだよ。
B 悔しいっていうか、みじめになるよな。
A あたしたちの英語の勉強ってさ、いつもネガティブじゃない。
B なに、ネガティブって?
A 受身ってこと。授業を受けるだけとかさ、黒板に書かれたことをノートに書き写すだけとかさ、教科書を読むだけとかさ。
B 問題集やったりとか。
A イグザクトリー! あたしこの言葉、好きなんだよね、なんかものすごく強い響きで。そう思わない?
B イグザクトリー!
A へんなところで、その言葉使わないでよ。ネガティブの話だけどさ、英語の勉強ってネガティブじゃだめなのよ、ポジィティブにしなきゃいけないのよ。ポジティブってわかる?
B なんだっけ、ネガティブだっけ、それの反対だろう
A イグザクトリー。つまり、英語を積極的に、創造的に学んでいくべきなのよ。
B 創造的か
A 赤ちゃんをみてよ、赤ちゃんが最初にする創造的表現は何だと思う?
B なんだろうな、わかんない。
A おぎゃあおぎゃあて泣いて生まれてくるじゃない、あれはね、ぼくは生まれましたよっていう意味なのよ。女の子だったら、あたし生まれてきちゃったって叫んでいるのよ。
B あ、そうなんだ、おぎゃあって生まれるのはそういう意味なんだ。
A 赤ちゃんは毎日毎日よく泣くわよね。あれもみんな赤ちゃんの言葉なのよ。おなかがすいたとか、だっこしてとか。
B おっぱい、吸いたいとか。
A あんたの視線、いまへんなところに向けなかった。
B わかった?
A わかるよ、そういう視線って、女の子たちは敏感なのよ。
B 要するにさ、英語を創造的表現しながら学んでいかなければだめだったってことだろう。英語で表現していかなければ、英語という言葉は自分のものにならないってことだろう。
A イグザクトリー。あんた、あたしの言いたいこと、よくわかってんじゃない。
B おれさ、おまえにさ、ちょっと創造的表現したいことがあるんだけど。
A なんなの?
B 今度さ、おれとディズニーランドいかない。

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 第二課 翻訳ソフトは悪魔のソフトか

コンピューターは日々進化していて、チェスの世界チャンピオンを打ち負かし、そのチェスよりさらに数倍もの知能を要するといわれる将棋でも、プロの棋士たちを敗っている。これから君たちが使っていく翻訳ソフトもまた日々成長しているが、まだまだ未開発製品で、ずいぶん奇妙な意味不明の言葉に転換されていく。だから英語の先生は君たちに翻訳ソフトを使えとは言わない。むしろ禁止している。ある先生などは、こんなものを英語教育に導入するなんてとんでもない、生徒たちを堕落させるだけだと言っている。
たしかに現在の翻訳ソフトは、飛行機にたとえると人を乗せてフライトできるような機体になってはいない。とても危なくてこんな飛行機には乗れない。乗客を乗せて安全に空を飛ぶことができるまでには、さらに何十年という月日がかかるだろう。しかし未完成品だが、すでにこのソフトは驚くべき可能性を秘めている。もしこの翻訳ソフトを、私たちのもう一つの脳細胞──英語脳として使うとき、だれもが自由に英語を話せるようになり、やがて日本人は日本語と英語を話せる民族になるだろう。
 翻訳ソフト! これこそ悪魔のように現れた「草の葉メソッド」の心臓でありエンジンなのだ。翻訳ソフトを英語学習の初期の段階から使って、学習者の内部に英語脳として植え込み、英語という未知なる言葉を体得させていく。                              

対話編                               A みんなが訳している英語って、難しくない。
B 難しい、難しい、自分でもぜんぜんわかってないんじゃない。
A テキストの文章のまま翻訳ソフトに入れて、転換されてきた英文をそのまま使ってんだよな。
B 《草の葉メソッド》って、テキストの文章をそのまま正確に訳すということじゃなくて、おれたちが使える英語にすることだから、ぜんぜん変えちゃっていいんだよ。
A おれは最初のこところは、ただ単純にさ、コンピューターは飛躍的に開発された。コンピューターは、チェスや将棋のチャンピオンも勝ったってやったよ。
B おれはさも、もっと派手にやったよ、わおー、コンピューターは、ものすごい。今はコンピューターの時代だ。コンピューターは、チェスのチャンピオンも、将棋のチヤンピオンも、囲碁のチャンピオンも打ち破ったってしたけど。
A おまえの訳、ぜんぜん迫力あるよな。
B テキストの文章を、正確に訳すんじゃなくて、自分の英語をつくればいいわけだから、それでいいんだよ。
A 難しいところは、すっ飛ばしていいわけだから。
B あのさ、草の葉メソッドのレッスンをやってると、なんかさ、英語の教科書っておれたちを馬鹿にしてると思わない。
A なんかさ、みんな小学三年生か四年生レベルの文章なんだよ。
B 空々しいっていうか、文章が空っぽなんだよな。
A おれも本当にそう思う。英語の先生はアメリカからきましただろう?
B 生徒は先生に聞きました。先生の好きな食べ物は何ですか。先生は日本食が好きです、とくに寿司がとても好きですと答えました。会話ってこれだけなんだよ。
A それで、生徒たちにその会話をリピートしなさいだろう。おれたちを馬鹿にしてる会話だよな。
B 草の葉メソッドのテキストって強烈だよな、
A おれたちが話したいことが書かれているんだよ
B 草の葉メソッドだったら、アメリカの中学生はもう中学生のときからキスするとききましたが本当ですかって会話からはじまるよ、絶対。
A 先生が最初にキスしたのは何歳のときですか、もう先生はセックスしましたか、それは何歳のときですか。おれさ、倉橋先生にこのことをきいてみたいなって思ってんだ。
B おまえ、倉橋先生に憧れてんだよな。

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