「草の葉メソッド」中級編
第6課 ダイエットと英語
君は太っている。太っているという領域ではない。君の体は肥満だ。肥満はあらゆる病気を引き起こす。かつての企業の社長たちはみんな太っていた。太っていることが社長のシンボルのようなものだった。しかし最近の経営者たちはスリムだ。大企業の経営者たちはほとんどスリムだ。それはしっかりと自己管理ができているからだと思う。自分の体重を管理できない人間に、どうして会社が管理できるかというわけだ。太っていくのは精神の緊張が足りないからだ。太るのは食べ過ぎるということだけではない。精神が立っていない。精神が緊張していない。精神がたるんでいる。だから太っていくのだ。
君に減量するコツを一つ教えよう。ポイントは体重計だ。君の家庭にも体重計はあるのだろう。毎日それで自分の体重を計ることだ。数値目標を決めて、君の体重の自己管理をする。そのとき厳しく耐えなければならないことがある。ダイエットをスタートさせても三カ月間は、まったく君の体重は減らない。減らないどころか、かえって体重は増えていくこともある。そこで多くの人が、ダイエットをやめてしまう。せっかくスタートさせたダイエットもつらくて脱落していく。魔の三カ月である。しかしもし君がその三カ月間を耐えて、ダイエットを続けたら、君の体重は次第に減っていく。そして四か月過ぎると劇的に変化していく。そのときになると、ダイエットそのものに充実感を感じる。君の精神が立っているからだ。
対話編
A なんだかこのコラム、私に突き刺さってくる、これって私に向けたコラムなの?
B あなただけじゃなくて、私を突き刺すコラムかもね。
A あなたは、ぜんぜん太ってないじゃないの。
B とんでもない、肉がブクブクついてる、三キロの減量めざしてダイエット中。
A あたしは五キロ。
B あなたは背が高いし、そんなに減らさなくてもいいんじゃない。
A スーパーでね、五キロのお米買ってくるじゃない、その重いこと重いこと、五キロってこんなに重いのか、こんな重いものをあたしは毎日背負って暮らしているんだと思ったらぞっとしてね、それでダイエットはじめたんだけど。
B はじめたけど、続かない。
A そう、あれって逆襲してくるのよね、やっとのことで一キロ減らしたと思ったら、次に計ったら二キロ増えてるの。
B リバウンドするのよね。
A 体が猛烈にダイエットに抵抗するのね、その抵抗に立ち向かってダイエットするんだけど、さらに激しく抵抗してくる。それで、結局、挫折しちゃうのよ。
B ダイエット産業が繁栄するわけよね。
A ダイエットフードに、サプリメントに、ジムに、ダイエット本に、週刊誌なんて毎週のようにダイエットの特集してるじゃない。
B だれもが減量しなければって思ってるのよ。
A これほど大きな産業として成り立つのは、ダイエットに挫折した人がものすごくいるってことじゃない。
B そうそう、そういうことよね。
A これって、英会話産業に似ていない。
B 似てる、似てる、この本を読めば英会話ができるとか、このCDを聞けば英語が自然に口をついて出てくるとか、こんな広告が新聞に毎日のように載ってるじゃない。
A あたしね、もう何回もその広告につられて英会話の教材を購入しているのよ。買ったときは一生懸命にやってみるけど、結局つづかない。
B あたしもね、もう思い出すのも嫌になるけど、三十万円も払って英会話教室に入ったのよ、でも全然ものにならなかった、三十万円、ドブに捨てたようなものだったわね。
A 英会話の産業も巨大でしょう。なんでも五千億円規模の産業らしいよ。これって膨大な数の人が英会話に挫折したってことでしょう。
B あたしたちみたいに甘い広告にひっかかる日本人が、いかに多くにいるかってことに語っているのよね。
第7課 アメリカを熱狂させた高校生たち
それは2018年の1月1日のことだ。アメリカの西海岸、カリフォニア州のパサデナという地で、おそらく世界最大であろうパレードが華やかに行われた。沿道は百万近い大群衆で埋まり、全米にテレビ中継され、何千万の人々が視聴する一大イベントだ。さまざまに装飾された二、三十メートルもの長大なフロート車をはさんで、全米から選抜された二十近いハイスクールのマーチングバンドが行進する。その光景をみるとき、アメリカの底力というものを感じないわけにはいかない。行進する高校生のバンドといったら、二百人とか三百人といった規模で、なかには五百人近い大編成で行進していくハイスクールもある。マーチングバンドだから、全員が楽器を手にしている。トランペットを、ホルンを、フルートを、クラリネットを、チューバを、バスーンを、トロンボーンを、そしてドラムがあり、キーボートもある。楽器はいずも高価だ。なにやらアメリカのパワーが楽器を吹奏しながら行進していくかのような光景だ。
そんななか京都の橘高校のバンドが行進していった。アメリカの高校生たちのマーチングは、がっしりと整列を組んで軍隊式に行進していくのだが、この日本から参加した高校生のマーチングはアメリカ人の度肝を抜くのだ。彼女たちはダンスをしながら吹奏して行進していくのだ。しかも彼女たちが吹奏するのは、アメリ人の大好きな「スイング、スイング、スイング」であり、「スターウォーズ」だった。若鮎がぴちぴちと飛び跳ねるようにマーチングしていく彼女たちに、沿道を埋めた大群衆から地鳴りのような拍手と歓声があがり、はげしく手がふられた。彼女たちにふられるその手はこう言っていた。「こんなマーチング、はじめてみたよ!」「ものすごく感動したよ!」「心が震えたよ!」「ありがとう、日本!」「またアメリカにきてくれ!」京都の高校生たちは、マーチングによって、何百万ものアメリカ人と熱く交流をしてきたのだった。
対話編
──このコラムを読んで、you tubeを見たが、ものすごい数の動画がのってるね。なかにはその再生が二百万とか三百万とある。
──アメリカのデズニーランドでも公演しているけど、この動画は一千万も再生されているよ。そしてさまざまな言語で彼女たちのマーチングを絶賛するコメントが書き込まれている。
──このパレードに参加した高校生たちのバントフェストが、スタジアムで行われていて、そちらの動画も載っているけど、これも見ものだよ。
──いや、これもぜったい見るべきだ。そのフェスタの司会者が、橘高校のバンドを紹介すると、一人の女の子を呼びだすんだ。
──そう、ヒトミカナマル、ヒトミカナマルはどこにいるって。
──フルートを吹いてる金丸仁美さんだ、彼女は英語がわからないから、なぜ自分が呼び出されているかがわからないきょとんしている。
──司会者は、彼女の左足は義足です。それは生まれたときから左足の膝から下がなかったのです。それでこのパレードに参加するためにも、骨などを削って猛練習してきたのですって紹介している。
──そう、それで金丸さんが司会者に横に立つと、司会者は彼女に、私たちはあなたの勇気と努力に感動していますと伝えると、観客からあたたかい拍手がわきおこる。
──素晴らしいシーンだよね。
──そう、そしてこのスタジアムでも彼女たちが激しくダンスしながら吹奏するシング、シング、シングにまた熱狂的な歓声かわき上がる。
──この動画もクセになる、毎日何度も見ていますなんてコメントがいっぱい書きこまれている。ほんとうにクセになる動画ね。
──いあ、ぼくもそうだ。彼女たちの行進をとらえたアメリカ市民の撮った動画が何十もあって、みだしたら止まらない。目に涙もにじむ。日本の高校生たちはアメリカですごいことをやってきたんだ。
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