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壮大な史劇にして雄大な政治劇に取り組むための素材集 2

ウオールデンは『note』に上陸して、さまざまな試みをなしてきたが、その一つが事件をYouTube によって追いかけることだった。その最初の試みが、五人の若い日本人のピアニストが、世界にデビューせんとしてショパン・ピアノコンクールに挑んだ戦いだった。そのコンクールは一次、二次、三次、そしてファイナルと、一か月をかけた長期戦である。その戦いの様子をはるか彼方のポーランドから、YouTubeはリアルタイムで日本に送付してきた。そこでウオールデンはその戦いの全容をnoteに刻みこんだのだ。

そしてその第二弾に取り組む日がやってきた。兵庫県で発生した斎藤知事パワハラ事件である。この事件を報ずるおびただしいばかりの数のYouTubeが、連日ネット上に出現していく。それぞれが、これが事実だ、これこそが真実だ、とYouTube で叫び、この知事をYouTubeで倒そうとする。しかしこの知事は倒れない。この地上に正義を打ち立てようとYouTuberたちはさらに過激なサイトを作り出して攻撃していく。この知事は二人の部下を自殺させた殺人者なのだと。検察が動き出した。逮捕が間近なのだというサイトまであらわれる。

なぜこの事件を追跡していくのか。それは不毛なる陳腐なるストーリーしか紡げなくなった作家の言葉を鍛えるために。毀滅して腑抜けになった劇作家の魂にやすりをかけるために。おびただしいばかりのサイトが現れるが、冷徹な目的をもって、ウオールデンはnoteにそれらのサイトを張り付けていこうか。真実とは一つではない。真実とはいくつもある。前から見た真実、後ろから見た真実、右からみた真実、左から見た真実、上から見た真実、下から見た真実。劇作家はその事件を戯曲に仕立てるためには、あらゆる真実を見なければならない。シェクスピアの四大悲劇とともに、イプセンの「民衆の敵」とともに、アーサー・ミラーの「るつぼ」とともに、ステファン・マッシーニの「リーマン・トリロジー」とともに、この事件を追跡していこう。ぞくぞくするばかりのドラマが展開されていく。



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