第3回 書店人の覚書帳
2025年1月9日、丸善ジュンク堂書店が、「2024年出版社別売上げベスト300」を発表したと業界紙「新文化」が報じた。
また記事には、売上ベスト100にリンクが貼られていたので、早速PDFファイルをダウンロードして、Excelに変換して、しばし考察してみた。
売上金額順位で、KADOKAWAが講談社を抜いて第1位となった。2024年、元会長の仮釈放や、サイバー攻撃による個人情報流出問題、そして、大きなシステム障害のため商品の出荷が滞るなど死活問題を抱えながら、稼働再開まで多くの苦労が現場にはあったと推察される。逆風の中、丸善ジュンク堂書店の出版社別売上の第一位は、拍手をお送りしたいところだ。
ただ、あくまでも金額が1位であり、冊数順にソートすると以下のような結果になる。
冊数別の1位は、集英社であり、2位が講談社、KADOKAWAは、3位となる。4位は、小学館だ。
以下も見てみよう。Gakkenを抜いて、新潮社が5位に浮上している。ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独 』(新潮文庫)のヒットが頭に思い浮かぶ。
またスクウェア・エニックスが、22位から9位にジャンプアップしているのもわかる。やはり、コミック出版社は、丸善ジュンク堂書店でも強いのだ。
再び、金額順で、ランクが上がった出版社をチェックしてみた。
もっとも順位を伸ばしたのは、飛鳥新社で、前年の109位から65位である。雨欠『変な家2 ~11の間取り図~』(飛鳥新社)が74万部の大ヒット。文庫版『変な家』も58万部売れて、シリーズ累計250万部と帯に書かれている。
次に伸びた版元は、101位から79位となったフォレスト出版だ。森永卓郎の『書いてはいけない―日本経済墜落の真相』(フォレスト出版)は、2024年の日販ベストセラーの総合部門で14位だった。
次に伸びた版元は、すばる舎、98位から77位にあがった。山本渉『任せるコツ』(すばる舎)帯には『「自分でやったほうが早い」がなくなる最高の任せ方』と書かれている。また永松茂久『人は話し方が9割』(すばる舎)はベストセラーランキングの常連で、2019年発売でありながら売れ続けて、累計133万部突破!ビジネス書部門で、3.5年連続1位と書かれている。ヒット作が牽引してのランクアップ。
一方、2024年にランキングを落とした出版社も見てみよう。
一番急落したのは、82位から98位に落ちたワニブックス、次が70位から86位に落ちた文響社、パイ インターナショナルも、56位から70位に落ちている。今後の動きを注視したい。
ここで、視点を変えて、平均価格のランキングは、どうなっているか?
一番平均価格が高い出版社は、「病気がみえる」シリーズが人気の医学書版元のメディックメディアで、平均価格は、4,495円。
その次は、『今日の治療薬』で有名な南江堂で、4,442円。
そして、羊土社(4,182円)医学書院(4,023円)と医学書版元が続き、人文書の、みすず書房(3,392円)法律書の有斐閣(3,066円)工学書のオーム社(3,014円)となっている。
反対に平均価格が低い版元は、秋田書店(636円)集英社(640円)白泉社(698円)スクウェア・エニックス(753円)スターツ出版(768円)一迅社(861円)小学館(871円)双葉社(879円)祥伝社(891円)新潮社(902円)くもん出版(906円)講談社(928円)竹書房(999円)と1,000円以下が続き、文藝春秋(1,008円)光文社(1,018円)増進堂・受験研究社(1,027円)KADOKAWA(1,030円)となっている。
最後に「ベスト100社」は、丸善ジュンク堂書店の売上の中で、どのくらいのシェアなのかを計算してみる。
100社の合計は、3,007万8,963冊、
345億5,004万4,920円である。
丸善CHIホールディングスの店舗・ネット販売事業は、662億4,300万円である。
したがって、ベスト100社のシェアは、52.15%となる。
100社で半分か‼️
(丸善ジュンク堂書店の店舗の売上の中には、文具・雑貨も含んでいるので、書籍販売だけのシェアなら80%以上かもしれない)
さて、丸善ジュンク堂書店で、1位となったKADOKAWA だが、日経にこんな記事が...
うーん🧐2023年度の日本の出版点数は、書籍が6万6,885点であり、KADOKAWAの年間発行点数が6,000点であるならば、新刊出版点数の占有率は、8.9%となる。
またKADOKAWAの2023年の「出版・IP創出」(紙+電子)の売上高は、1,379億3,700万円であった。
それに対し、2023年度の日本の出版市場(紙+電子)は1兆5963億円なので、KADOKAWAの紙+電子の出版市場の占有率は、8.64%となる。
それにしても、出版点数を現行の6,000
点から9,000点、1.5倍にすると、現在IPの比率が1%から10年後に新刊の2〜3割が、IPとなるのは、行きすぎた方針ではなかろうか?
つづく