好きなものを語る① the pillows 14th album 「Wake up! Wake up! Wake up!」
シリーズ化したものが続くは知らない。
ただ好きなものを好きなように語るんだ。
はじめに
中学生のときに漫画「SKET DANCE」にて
出会ったthe pillows(以下ピロウズ)。
どうやってハマったかは後で話すとして、1st album「雨に唄えば」から22nd album「REBROADCAST」までの全てのアルバムを100回以上は聞いた。少し盛ったが100回以上フルで聞いたアルバムはいくつかある。
その22枚の中で断然自分の中で一番がこの14th albumである「Wake up! Wake up! Wake up!」(以下「Wake up!」)だ。
どこがいいのか好きに語ろう。noteは本来そういう場所のはずだ。
全体を通して
最近は廃れてきたという話を聞くが、ピロウズのアルバムの多くは
「コンセプト・アルバム」である。
自分なりの解釈で言えば「コンセプト・アルバム」とは、
上から下まで順序通りに聞くことで、とあるコンセプトやストーリーが思い浮かぶアルバム
のことを指す。
そして「Wake up!」は中でもコンセプトが一気通貫している上に、群を抜いて完璧なストーリーが組み上がっている。
初めて聞いたときの感触はあまり記憶にはないが、ピロウズの中でもこのアルバムに関しては「途中から聞く」ということをほとんどしたことがないことだけは良く覚えている。そのくらい頭から聞きたくなるのだ。
簡単にストーリーを言えば、
ある世界で目を覚ました人が、好きな人とともに過ごすうちに調子に乗ってたった一人の世界にぶち込まれて絶望する話
ということになる。
まぁ分かりづらいと思うので、上から順番になぞっていこう。
一応5段階評価をしておく。神アルバムだからほぼ参考にならないが。
Wake up! dodo ☆☆☆☆★
イントロが神。知らない世界のドアが開いたというのが一発でわかる。
この時点でWake up!の世界に入り込んでいる。
ゆっくりとした立ち上がりから、落ち着いたサビ。たとえこの曲をライブの最初にもってきても、飛ばしすぎず、上がりすぎず、ちょうどよく盛り上げてくれる。
そしてアルバム名を意識させる曲名。
YOUNGSTER (Kent Arrow) ☆☆☆☆★
Wake up! dodo でちょうどよく盛り上がったテンションを引き継いで、
この曲が完璧なバトンパスを受ける。
第二部で明らかになる根拠のない全能感みたいなものの片鱗がチラチラしてて、素敵なアクセルのかかり方をしている。
ライブ映え的な意味で云うと、ラスサビ前に手拍子が入るのも素晴らしい。
プロポーズ ☆☆☆☆★
スルメ曲。自分も最初聞いたときはハマらなかったけど、
次の曲を聞くために無限に聞いてたらいい曲な気がしてきた。
ピロウズ節全開の歌詞。
分かったような分からんような、そんな境界線上で聞ける曲。
さわおさんが使うカタカナってえらい耳障りがいい。
この曲がハマるかどうかでピロウズ適正があるかわかる。
ほうれん草と純愛で
三流の悪党に勝つ
かいけつゾロリかなって思ったあなた、多分同世代。
スケアクロウ ☆☆☆☆☆
無人島に3曲だけ持っていって良いって言われたら
確実に入るくらい好きな曲。ピロウズの沼に嵌めた元凶。
「Rock stock&too smoking the pillows」というベストアルバムを
「SKET DANCE」からピロウズに入った僕は最初に借りた。
だけど期待してた「funny bunny」がいまいちハマらなくて、
せっかくだから他の曲聞いてみるかって聞いたら、こいつがいた。
今でもこれだけは覚えてる、一番Aメロのラストの歌詞
誰かが語った現実と云う名の物語が答えじゃないぜ
に心が震えた。心臓の内側をなぞられるようなあの感触。
今でもこの部分を聞くと当時の心境がリアルに再現できるから、
最初に聞いたときによっぽど強く心に刻まれたんだ。
このあたりでWake up!して盛り上がったテンションを、
一度落ち着けるバラード曲。自分としてはしっとりぶち上がってる。
最後の方の英語歌詞がガバなのはご愛嬌。
是非YouTubeとかでMVも観てほしい。
そこそこライブには足を運んだけど、
この曲が演奏されたことは一度しかない。
BOAT HOUSE ☆☆☆☆★
ここから第二部。このアルバムの内で一番好きなパートでもある。
第一部は朝目覚めて、一日やったるでみたいなテンション。
第二部は夕方にビーチで夕日を見ながら佇んでるようなテンション。
どちらも明るいけれど、全然違う雰囲気。
こんなバカバカしい歌を信じてくれるのは
そう君だけさ変わり者の君だけ
無人島で君と二人だけでギターをかき鳴らしながら
この歌を唄っている様子がありありと思い浮かぶ。ほんわかした素敵な歌。
このあたりから露骨に調子に乗り出す主人公にもご注目。
船壊して家建てちゃったからね、しょうがないね。
プレジャー・ソング ☆☆☆☆★
1番のAメロがこの上なく好き。
戦場へ向かう兵士達の列
僕も並んでるような目をしてるって
‘キミに幸あれ’と誰かが声かける
ありがとう 幸運とかあてにしてないけど
ピロウズにしては(失礼)とても素直な爽やかな歌。
独特の歌詞、みたいなものもなくてそういう意味でも素直。
普通にいい曲過ぎて話すことがない。
と思ったけど、一点あった。
波に飲まれそうな声
手放さないで信じてきたのさ
泣きながら見た景色も
嘘のように好きになれた
この「波」は、BOAT HOUSEから引き継いでいる。
曲のテンションやストーリーだけでなくモチーフやオブジェクトを
どんどんバトンパスしているのも素敵なアルバム。
シリアス・プラン ☆☆☆☆★
スルメ曲その2。
前の二曲とはうってかわってだるーんとした曲調。
スローライフ最高だぜ!って言いながら
曲名はシリアス・プラン、そのギャップがいい。
歌詞の途中にも出てくるように
ハンモックの上で唄っているようなイメージ。
相変わらず何言ってるか分かんねぇけど、
ハンモック乗ってる気分になればいいんじゃないかな。
次の曲に向けての箸休め。
でもプロポーズみたいな妙な中毒性がある。
ドブルィ ヴェーチェル 甘い悪夢カモン
次のロシアンティーに繋がってると勝手に思ってる。
Skinny Blues ☆☆☆☆☆
このアルバムで一番好きな曲はどれですかと言われたら
間違いなくこの曲を選ぶ。
疾走感、ピロウズ前面の歌詞、全てが完璧。
ロシアンティーでのさばるジャムを
羨むブラウンシュガー 鈍く輝け
こんな歌詞思いつかないでしょ。
聞いているときの気分はブラウンシュガー。
ピロウズはコンセプト・アルバムが多いので、
似た位置に似た曲がくることがある。
「ムーンダスト」ではメッセージ、
「STROLL AND ROLL」ではレディオテレグラフィーと
似た位置にあって、どの曲も本当に好き。
尖った曲調があったり、雰囲気を漂わせているわけではない。
でも、少し明るい曲調がテンションを盛り上げてくれる。
この曲をこの位置で聞くために上から聞いていると言っても過言ではない。
第二部を締めくくる調子に乗りまくったポップさが、
コンセプトの中で重要な位置を占めているのも推しポイント。
プライベートキングタム ☆☆☆☆☆
さぁここから第三部。ラストに向けて静かに疾走していく。
前曲Skinny Bluesで「一人になっても怖くないぜ!」
なんてイキってたら本当に一人になってしまった、そんな歌。
うってかわって静かに歌い出すさわおさんの声が
優しく第三部の始まりを告げる。
世界が滅んで僕は王様になった
猿を家来にして さあ何して遊ぼう
キミはどこ行った 夕陽がキレイだ
こんなはずじゃないんだ
風だけが笑う
第二部の有頂天さはどこへやら、
物寂しい夕暮れの風景が聞いている人を引きつける。
荒涼感とはまさにこのことを云うんだろう。
Skinny Bluesからプライベートキングダムへの流れが美し過ぎていつ聞いても惚れ惚れする。
このアルバムすげえなって思ったのは多分この曲を聞いたおかげ。
Century Creepers (Voice of the Proteus) ☆☆☆☆★
プライベートキングダムの物寂しさを受け継ぎながらも、
ロックに疾走感と清涼感によって全く異なる雰囲気の曲に仕上がっている。
流石としか言いようがない。
ここは静かで何もない
自分の足音が谺してるだけ
景色も無い
サビ前の歌詞はこれだけ、ピロウズにしてはサビがかなり長い。
疾走感をこういうところから汲み取ることができるのなら、
何もかもが計算ずくめで、どっぷりとWake up!の世界に飲み込まれている。
Sweet Baggy Days ☆☆☆☆★
このアルバムのラスト。
一人で生きていくことを受け入れたかのような優しい曲。
と思わせておいてからの、ラストの叫びに胸が張り裂けそうになる。
そしてドアの閉じる音をもって、
Wake up! dodoから始まる1つの物語が終わる。
やっぱりこのアルバムは最高傑作だ。
最後に
コンセプト・アルバムは上から下に向けて順番に聞くことで、
最大限に楽しめるということが少しでも伝わっただろうか。
もちろんそのように作っているアルバムばかりではないので、
全てを上から聞いてほしいと言っているわけではない。
自分自身他のアーティストはつまみ食いすることが多い。
そもそも曲順に意図を感じなかったり、シングル曲の主張が強すぎたりで全体のバランスがいびつになっていることもあるからだ。
ただサブスクによって好きな曲だけをつまみ食いしながら聞くスタンスが浸透しつつある中で、しっかりとコンセプトとそれに基づいたストーリーを元に一曲一曲を作っているアルバムとアーティストがいることを知っていただけたなら何よりである。
人の作った、なんならプログラムで勝手に組まれた、
アーティストもジャンルもバラバラのプレイリスト。
それを聞くのもいいが、1つのアルバムに込められたアーティストの思い
をなぞるような聴き方を知っていれば、また少し音楽の地平は広がる。
この聴き方を取得できたおかげなのか、せいなのか
中高時代は3年ほどピロウズ以外全く聞かなかった。
そのときの遺産で今も聞き続けているし、
胸を張って大ファンですと言い続けられる。
みんなもピロウズ聞こうな。