「男だったのに女と偽ってオリンピックに参戦したのか」と思い込んで事情すら理解しようともしない愚かな人達
正直この手の話は「話にならない」と思っていたのだが、初めからこの認識が出来ずにいつまでも男が参戦していると思い込んでいる人達が物凄く多いことに驚きどころか呆れすら覚える。
遂に当該の選手はパリ当局に誹謗中傷を受けていると訴えることに出た。
その人の名前はアラビア語基準なので表記に揺れがあったりするがここではイマネ・ヘリフ(またはイマネ・ケリフ、以下イマネ)としておく。
この選手はアルジェリアのアマチュアボクシング代表で66kgを中心にオリンピックや各種世界大会に出場する経験を持つ。
勿論、エントリーは全て女性としてである。
この時点で思い込んでいる人が多くて全く話にならないのだが性転換もしていないし、ずっと女性として参加していたのに突如東京オリンピック以降の世界大会ではエントリーから外されることになった。
理由は男に準ずる染色体を持っていたことが分かったと言う。
言わなくても分かるが男性を決める染色体とはY染色体のことである。
Y染色体があると性は分化されて男になることが決まる、というのはこれまでの科学などでそう教え込まれて来たのだが、実は初めから女性であってもY染色体を持つ人がごく稀に現れるそうである。
これが性未分化症(性分化疾患)と言われるものらしい。
これには幾つか例があって両性具有なんかそうであり、染色体もそれに含まれるものであるようだ。
割合からすれば5000人に1人と言うものらしい。
イマネ選手はそれに含まれるらしいのだが、見た目がやや男っぽく見えるというものそれらしいのである。
男性の特質を備えているので筋肉量とかややアドバンテージがあるようで今回のオリンピックではそれを活かして優勝して金メダルを獲得することが出来たようである。
これを受けて「狡い」みたいな声ばっかり上がる。
どうせこんな獣のような鳴き声は試合すら観たこともない愚か者である。
フランスとの時差は7時間なので夜に行われるボクシングの試合の殆どが我が国では真夜中か明け方になる。
この時点で文句言う連中の殆どはリアルタイムで試合を観ないだろう。
尤も、地上波で放送されていないのだ。
だから確認しようがないので孫引きみたいな情報を掻い摘んで「男が性別偽って出てる!」みたいな思い込みを元に愚か者達が喚き散らすことになるのである。
身も蓋もない事を言うが体の特徴も正直「才能」の一つである。
筋肉量が多く俊敏性やら膂力にアドバンテージがあるのならそれを活かしてこそである。
腕の長い人が遠距離から打ち込んだり上半身を覆ったって良い訳で、時に村田諒太はその長いリーチを活かしてオリンピックミドル級金メダルどころか世界タイトルを獲得することが出来たのである。
村田諒太のリーチ(両腕を肩と同じ高さに揃えて横一直線に広げた長さのことで、日本語や東アジアなら尋である)はゲンナジー・ゴロフキンやサウル“カネロ”アルバレスよりも10cm程長いがリーチが長いからと言って無敵とは限らない。
村田諒太はゴロフキンのジャブに沈んで、カネロは173cmと今ではスーパーミドル級(ライトヘビー級でタイトル取りに行ったこともある)で活躍しているがこの背丈しかない中でも中重量級を勝ち続けているのでアドバンテージが別に本人達にとってハンデにならないことくらい分かる筈である。
パンチ力の強い選手なんていくらでもいる。況や女に於いてをや、である。
ステロイド使用の発覚した木村ミノルでさえもブアカーオや和島大海に負けたりもするのでパンチが強いだけでは通らないのが格闘技である(これは立ち技キックボクシング)。
カネロもステロイドを使ったことあるのでなんとも言えないのだが、普通にそれなくても技術があるし、普通に負けたりもしている(ステ使ってないドミトリー・ビボルに負けた)。
イマネ選手も56ある戦績の中でも9敗しているので別に最強でもないし、東京オリンピックでは敗退している。
こうしたことも愚か者にとっては興味ないのだろう。
ボクシングは基本的にパンチしかないがKOしなくても手数や積極性で評価されるので、要は「躱せばいい」のである。
本邦で例えるが女子ボクシングは競技者が少なく余り比較出来ないが、K-1に例えるとKANAと言う選手がいたがこの選手は空手出身もあってパンチ力が強くて女子の中ではダウンやKOを量産する珍しい選手なのだが、より背の高い欧州の選手にパンチを振り下ろされたりと苦渋を味わったこともあったりもする。
アマチュアはラウンド数が3ラウンドしかなくジャッジが5人なので前半取られると巻き返さなくてはならなくなるからどうしても手数を増やすべく手打ちか猫パンチみたいな攻撃ばかり増えてしまう。
力一杯KOを狙おうとしても躱されたら意味がないので結局猫パンチみたいな攻撃になってしまう。
一回戦で敗退してしまった岡澤セオンがポイントを取られまいとして徹底的にアウトボクシングをやったのだが、こちらから攻撃しなければ全く意味はないので終始相手側にポイントを取られて負けてしまったのである。
セオンは東京オリンピックの時もそうだったが距離を取ったアウトボクシングをやることで勝ち残って来たのだが相手もそれを読んで対策をしていただけである。
技術もなければ緒戦で敗退して泣き言を言うのなら負けて然るべきである。
それならもはやリングに上がる資格すらなかろう。
キャットファイトでもやれ。
それを今度オリンピック種目にしたらどうだ?
どうせお色気、セクシー、児戯路線で始まっても途中から「本気」になってしまうのである。
元々女子プロレスもセクシー路線だった筈なのだがいつの間にか激しいものになってしまったし、アメリカで行われているアメフトの変種であるランジェリーフットボールもいつの間にか「ガチンコ」になってしまったようである。
元々エロ目的で釣る為の興行がいつの間にか真剣に取り組むようになるのはいつの時代どこでも一緒である。
ランジェリーと言うので元々下着同然の恰好にプロテクターを装着していたものだったのがいつしかそれは水着、スポーツウェアみたいなものに代わり(相変わらずビキニスタイルだが)、名称もLの音を残したレジェンドフットボールに変わっていったのである。
日本人選手も所属したことのあるスポーツである。
女子にも男子のようなアメフトがあることはあるのだが、そちらの方がどうやら有名?らしい。
オリンピック種目の野球とソフトボールの関係のようである。
別にこれも男女に分かれていると言う訳でもなく、偶々野球に男子が多く集まり、ソフトボールには女子が集まっているだけのことである。
女子にも普通の野球が存在するし、なんなら女子の高校野球の全国大会も行われていたりする。
しかしやっぱり男子と比べればマイナーな部類なのでどうもプロ競技としては結びつかないようである。
以前はあったのだが、活動休止となってしまっているので幾らスポーツがあったとしてもそれを支える人達がいないと意味をなさないのである。
このことは一番よく分かっているのに、あることが恰も自明の理として誰も不思議に思わない。
プロ野球ですらスポンサーが撤退して球団が消滅してしまいそうになった時に1リーグ制にしようかと議論が巻き起こっていた。
結局、楽天を呼び込むことで2リーグは維持されることになった。
初めに戻るが、仮にこのイマネ選手がみんなの望む様にトランス枠なんか作ったらそれこそ人が集まるのかと思う。
この症例は5000人に1人なので果たして全世界から探せるのかとすら思える。
日本の男子のプロボクシングの人口がどのくらいかって言ったら1500人程度と言われる。
減り続けているものの案外多いかも知れないがライセンスを持ってる人限定なのでボクシングやり続けていると限ったらその10分の1程度だろうと考えられる。
重要なのはA級ライセンスであってB級C級は相撲で言う所の幕下や序ノ口の階層と同じだろう。
既に男子ですら探すのが難しいので女子だったらどのくらいになる?
ライセンス持っていても100人さえ満たない。
多分両手両足の指で間に合ってしまうかも知れない。
JBCが発行している男子のランキング表とは別の女子育成枠を見てみれば分かると思うが、上位陣は各階級で3人程度しかいなく他は戦績が酷くて大いに負け越しているにも拘らず日本タイトル挑戦圏内にいたりするのである。
身も蓋もないことを言ってしまえばJBCが選手を獲得するのが下手糞過ぎて常に枯渇状態になってしまっている。
個人的にボクシングだけでなく格闘技を見渡してもK-1やらRISEやらシュートボクシングやらRIZINに取られているようにも思える。
元々空手とか柔道レスリングとか競技人口が多い筈なのにプロの方へは行かないのだ。
意外とプロボクサーのバックボーンに柔道があったりするのでそこからスカウト出来ないのかと思ったがどうも体制が変わっても相変わらず閉鎖的だと感じる。
と、話はやや逸れ気味だがこんな男子も女子も枯れ気味のジャンルでどうやって似た人間のスポーツを叶えさせることが出来るのだ?
やっと探しても二人でずっとチャンピオンシップやって賞のやり取りを繰り返すのか?
それならば、究極女子のスポーツなんて必要なかろう。
元々女子のスポーツなんて除外されていたのだから。
危険というならそもそも男子に混じるスポーツ自体危険極まりないものばかりである。
男女混交も止めてしまえ。
況してや、女子が力の向上を目的とする男子との練習も止めてしまえ。
とは言うものの男女同数の競技者を目指したとしても現実的には女子にスポーツをさせること自体憚られたりすることだってあるのだ。
張本勲が入江聖奈に対して「女の子が殴り合いをするのはどうかと思う」と感想を漏らすくらいなので結局これはどこもついて回ってしまう。
その入江と選考会で対戦した晝田瑞希も世界王者になったのにも拘らず親から「まだボクシングを続けているのか」と言われてしまっているので現実的には女子のスポーツは評価されていないのである。
尤もボクシングが殴り合いの狂気染みたスポーツと言うこともあってなかなか現実的な評価を貰っていないということもそうなのだが。
しかし、競技化を目指すとなればこうした茨の道も歩まねばならないのだろうと感じる。
イマネ選手は訴訟を起こすらしいが、これに仮令勝ったとしても果たして後から競技者がついてくるのかどうかなのである。
多分次のステージとしては男か女かどうでも良く、力の強い才能に恵まれた選手ばかり集まると今度は忌避されてしまうということに繋がる虞が出て来る。
これは別に女子ボクシングに限ったことではないが既に男子野球がこの状態で才能のある、お金のある、環境に恵まれた人間しか出来ないと分かっているから競技人口が減ってしまっていると言う現実が横たわる。
男子でもボクシングの競技者を増やすべく階級を増やしたり地域タイトルを増やしたりと弛まない努力はしているのだがそれでも減ることは減るし、みんな大体夢から覚めてしまっている。
常に安定している訳ではない。
安定している訳でもないがそれでもみんなで支えていくのである。