ボクシングは階級制のスポーツだということが忘れられている🙄💭
すわ井上尚弥🆚中谷潤人との勝負を期待すると言われてもこんなのは一部ボクシングオタクしか考えてないことであって、井上尚弥も明言している通り追いついて来たらという条件付きである。
前回こんなことをエントリーしたが、二人とも全然別のところにいるのであって接触すらしない。
取り敢えず体格差を比較してみても井上尚弥の身長は163cmで中谷潤人の身長は173cmなのだがここでもう気付く筈である。
現時点で井上の階級の方が中谷よりも一つ上ということになっている。
中谷の方が10cmも高いのに井上尚弥よりも軽い階級にいるのだからどう考えたって体格を維持しているのは中谷の方である。
井上も中谷も通常体重は60kgを超えている。
井上はウェルター級(63kg)に位置することになる。
中谷もだが通常体重は62kgあるようでこれはスーパーライト級に位置する。
元々フライ級で王者になったのだから10kg以上の減量をして来たのである。
計量が行われてその翌日には体重が戻っているようなのでもはや減量する意味あるのかとすら思えてしまうのだが、階級が細分化されて形だけのものとなってしまった感がある。
井上が相手にしたドヘニーは試合当日70kgくらいになっていたようである。
そんなに体重増やしたところで動き辛くなるだけなのだが、増やすことによるメリットがあるらしい。
そのメリットこそボクシングの肝なのだが結局そうしたアドバンテージ欲しさに形だけの枠となってしまった階級制ボーナスをみんなが欲しがるのである。
パンチ力を重くするのもあるが、パンチに耐えられる厚みを獲得することが出来るというものである。
相手よりどれだけ体を重くして重さの鎧を纏うかという極限チキンレースが4〜12ラウンド使って行われる。
背の高い選手はその身長差を活かして自分よりも低い相手にパンチを振り下ろす。
背が高ければそれだけ相手は腕を上げざるを得ないのでそれだけでも疲れるという。
①どれだけ被弾せずに、②どれだけ相手に体重乗っけてパンチを放つか、③どれだけ相手のパンチに耐えられるか、④どれだけパワーを温存出来るか、というのがボクシングの戦略の要である。
パンチ一閃で相手がマットに沈む様をこれまで観て来た。
小さな相手は益々小さく蹲りレフェリーがストップを掛ける。
実は上記4点の内、後者3点(②③④)のアドバンテージがあれば高度な技術を必要としない(一応どれを取っても技術の要るものだが)。
減量とリカバリーの才能だけが際立ちいざ海外へ行くと天才に一発で屠られてしまうことが多々ある。
国内で小さな外国人相手に勝ち星だけ重ねて東洋太平洋のランキングを上げて世界へと飛び立つマジックを作り出す。
173cmの選手にはカネロがいる。
今の階級はスーパーミドル級となっているが嘗てライトヘビー級のベルトを巻いたことがある。
それではその最軽量級で戦って来た人間が重量級で戦えとなったら同じように技術を駆使して勝てるかどうかである。
これが答えである。
減量をし過ぎるとパフォーマンスが当日でも落ちたままなので最速力のみによる短いラウンドで決着をつけようとする。
相手も同じような伎倆とパワーだったら膠着して最終ラウンドまで縺れ込むことがある。
その時は手数も減り倒れる事もない弱々しいパンチが相手の顔を撫でる。
後半がぐだぐだになることが多くて正直逆転するかどうかすらはっきり言って「結果はどっちでもいい」ということになる。
ラウンドが長いことが恰も良いことだと言われても余りメリットを感じることはない。
テレビ放映のあったころの目玉の選手がどれだけ長く映っているかのメーターみたいなもので今はそれがなくなっているからダメージを蓄積させないためにも減らすべきと考える。
無論テレビのない頃からボクシングはあってその頃のラウンド数は15ラウンドどころではなく一日中殴り合っているようなものなので、これこそラウンド数が見直されて今に至っていたりする訳である。
ラウンド数の話はここまでにして、階級の話に戻れば世界チャンピオンが複数の階級を制覇することがあるが、よくよく考えてみれば体重を増やしたのではなくて減量がきつくて階級を上げざるを得なくなっているのが現状で、元々強ければ層のそれほど厚くもない1kg刻みの最軽量の階級を手にする事も可能だったりする。
本邦ならどの階級に厚みがあるか、新人王戦のエントリーシートを見れば分かる。
バンタム級〜スーパーフェザー級の四つの階級に選手が多く集まり、スーパーフライ級以下となると数はそれ程多くはない。
言うなれば狙い易い階級で、10kg以上下げれば世界挑戦も国内でランキングを上げれば可能となって来るのである。
技術もあって減量もできるのなら最軽量級狙いで世界王者になれるのだが、殆どの選手は減量する事だって難しいのである。
とは言っても世界王者や挑戦者やランカーすら計量失敗を起こすことが“よくある”のである。
水抜きがほぼ主流となっている現状では筋肉の水分貯蓄が上手く行かず脂肪だけが残ってしまったお腹を見て「まだ落とせるだろ」というような意見が飛び交う。
体調管理もプロならではだし減量からのリカバリーもまた技術なのでこれをクリアした人間なら勝ちを捥ぎ取ることが出来る。
しかしスポーツなのでキャリアを重ねる度に筋肉も大きくなってしまい、減量すら難しくなって否応無しに階級変更を余儀無くされることがある。
世界王者が階級を上げた途端に足踏みしてしまうことがある。
これまで繰り返して言って来たが、相手のパワーに負けてるだけである。
本人とて減量によるアドバンテージを手に入れたっていざそれが小さくなると技術のみでやり繰り出来るものではなくなっていくのである。
分かり易い例なら大相撲がそれで只管重くするしかなく200kg越えの力士も珍しくはなくなってしまったが、逆に重くしたって膝や腰がそれに耐えられるものでもないのでやっぱり技術で転がす事が出来てしまう。
ボクシングだと12ラウンド只管逃げたり躱したりしたって積極性を否定されてるのだからこんなことやったって点数つかなくなるだけだしドライに考えれば客の評価も下がるだけなので人間の限界を何処かで感じる訳である。
井上も中谷も減量が出来るから軽量級でも活躍出来るのであって、通常体重のライト級で試合したらどこまで行けるかという話である。
嘗て細川バレンタインはスーパーライト級を中心に試合をしていたが実は減量をその時したことはなく日本王者まで辿り着いて井上浩樹とタイトルを争った事もある。
浩樹の方がかなり減量していて辛かったという。
中量級でも減量しなくちゃならない。
体が大きく重量級であってもミドル級まで落とさなくてはならない。
新人王戦のエントリー見ても分かるがミドル級もそんなに数多くはなく、ヘビー級が新人王にないのである。
重量級であれば日本人の選手がいないので海外へ行かなくてはならなくなるがそんなお金もないので結局減量しなくてはならなくなる。
今の大橋ジムが井上尚弥のお釣りで各種のトーナメント戦を開催しているが、ボクシング全体を盛り上げるためには結局井上尚弥に頑張ってもらうしかないという思惑と実情がある。
幻想をずっと持って貰うためには暫くスーパーバンタム級でやるしかないのである。
それでも人間年は取るので減量にも限界を来す時が来る。
その時階級を上げるのであろうが、中谷の地位がその時何処にあるかだ。
少なくとも中谷が井上に追いつくのなら井上と同じような四団体統一王者位の格がなければ合わないだろう。
仮に中谷が井上を下したとしてその先のゴール、いや道すがらはどうなる。
マニー・パッキャオのようにスーパーウェルター級まで行くのか、カネロのようにライトヘビー級まで行くのか、重くなっても技術とパワーを温存出来るかどうかである。
選手を擁する各種プロモーターの思惑で闘って得るものと闘ったら失ってしまうものとを天秤に掛けようとしたらどっちを取るかなんて自ずと分かって来そうなものなのだが。