草目彰

かなり不定期で、文章を書いています。 文学フリマ東京38に出店予定です。 もし、記事の…

草目彰

かなり不定期で、文章を書いています。 文学フリマ東京38に出店予定です。 もし、記事の中に気になるものがあったら、スキ(♡)やフォローしていただけると励みになります。

マガジン

  • 自作の文章(エッセイのようなもの)

    小説というより、自分の考えをそのまま書いたもの。

  • 自作の詩みたいなもの

    物語の書き出しが、飛躍しないまま一端の帰着をみたもの。

  • 過ぎゆく季節を抱きしめて

    秋の涼しさを見せる十月の初めだった。病院の定期診察が終わり、薬局まで歩いている途中、考えた。 あんなに暑かったいろいろあった今年の夏も、きっともう巡って来ることはないのだ。昔、いつまでもまたやってくるのだと思っていた気温が低かった夏も、もう巡ってくることはない。夏はみんな一度きりの夏。 そんな当たり前のことにふと思い至った時、過ぎゆく季節の一つ一つを書き残しておきたいと思った。一つ一つの季節の手触りが、文章の中に残っているように。

  • 運命の女神

    小説「運命の女神」完結済。 ー「聡子の話ではノストラダムスの予言通り、1999年に世界は滅亡していたらしい。」 総治と聡子。そしてそれだけでは終わらない世界。

最近の記事

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運命の女神 (1)

「運命の女神」   あの頃のそれしかなかった世界  生きる。とにかく課題は山積みである。  状況は慌ただしいというより、全てが自分の処理能力を上回っている、という方が正しく、「大丈夫か?」と問われれば、何も考えずに「大丈夫」と答えてしまいそうな程余裕がない。「だめ」と答えて、「何が?」と問われても、きっと答えることなどできない。だから「大丈夫」。  身体はまるで何かに密閉されているようだ。どこか息苦しく、押し潰されそうになりながら、なんとかのろまに動かしている。指令を出し

    • 「ずっと見てるよ 誰も知らなくても知ってるよ」 文学フリマ東京38 フリーペーパー

      「ずっと見てるよ 誰も知らなくても知ってるよ」 世の中ってやっぱり、ままならないことがたくさんあるものですよ。 昔は人知れずそれを耐える美学ってあった気がするのだけれど、私は最近SNSなんかをひたすら回遊していると、ままならないことはなんとかしよう、少しずつ変えていける、という流れに変わってきたのかなーと感じる。なんでしょうね、藤沢周平とかあの辺の書く「多くの人に賛同してもらえる訳じゃない、誰も知らない、けどその人の中で筋が通って誰かを助けてる」みたいな話って今も人々にカタ

      • おにぎりはただのしょっぱいご飯じゃない

        ※文学フリマ東京38に際しまして、noteで皆さんに当出店者を知ってもらうために「文学フリマ東京38の暇つぶしにどうぞ」として公開していました。 表のタイトルは上に変えましたが内容は変わっていません。 文学フリマ参加者の皆さんの中には、当日、簡単に食べられるのでおにぎりを食べている方も結構いらっしゃるのではと思います。という訳で、おにぎりで文章を一つ。よければどこかの暇つぶしに読んでね。  「ただのしょっぱいご飯じゃないのよ、おにぎりは」 祖母は私によくおにぎりを握って

        • めぐる 春に咲く 嘘吐き の 夢

          今日こそ自分の過去の話で人の気を惹こうと目論(もくろ)んでいたのに、結局それができずに、ただ過去の自分を私自身が憐れむだけの、桜咲く春の夜です。 短い短い桜の季節の盛りです。 少し前まで、風の強い日が続いていましたが、ようやく、温かな春の夢の時間がはじまりました。 風の音を聴く夜よりも、不思議と心が騒ぐ、静かで温かな夜です。 こんなに優しい夜でも、悲しくなったり、寂しくなったりするものなのだ。驚きながら途方に暮れています。 これは偏(ひとえ)に、私が嘘吐(つ)きである

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        運命の女神 (1)

        マガジン

        • 自作の文章(エッセイのようなもの)
          2本
        • 自作の詩みたいなもの
          6本
        • 過ぎゆく季節を抱きしめて
          2本
        • 運命の女神
          10本

        記事

          安全な宗教なんてない

           機を得てNHKの「こころの時代」シリーズ問われる宗教とカルトを見た。このシリーズは、昨年起こった安倍首相銃撃事件を受けて、旧統一教会の問題やカルトの問題などについて、宗教の研究者を主とした専門家達が討論するもの。  6回目は宗教リテラシーについての討論だった。  さて、これを読んでいる人は宗教リテラシーという言葉を聞いてどんなものを想像するだろう?リテラシーと言えば、昨今よく聞くのは情報リテラシーという言葉だから、これも活用する力や、不都合を避ける能力などというイメージがあ

          安全な宗教なんてない

          救いを求めているの。

           私たちは救いを求めているの。たくさんの誰かの物語の中に。そこにある、本当のことに触れると私たちは、高揚して、生きるということを感じられる。もう、別にそれが自分の生かどうかなんて関係ない。自分達がただの物語の受容体でしかなく、インプットをなぞらえてアウトプットするだけの有機的システムだとしても、それの何が問題なんだろう?私たちは電気の代わりに食べ物からエネルギーを得ているだけ。私たちの体の内部だって、刺激を伝えるのは電気信号なのだ。  どうしてだろう?私たちは消費ばかりしてい

          救いを求めているの。

          いつか生ゴミになる 

           私は気がついた時から”私”であったのだが、思えば随分不可思議なのりものを動かしてこの世界と接しているものだ。この「からだ」と呼ばれるのりもののことだ。のりもの、という概念を知るより前から”私”はこの身体を動かしているので、この身体がのりものだと気づくのに随分時間がかかってしまった。物心ついた時には、どう動かすかについて考えずとも良くなっていたし、乗り換えたことがなかったので、これは”私”であるとすら思っていた。しかしどうも、私はいつかこの身体を乗り捨てる時が来るのである。と

          いつか生ゴミになる 

          たった一つの大切なこと

           最後の最後まで嘘を突き通すことなんてできないのさ。  最後の最後まで信じようとする人を騙しおおせることはできない。何かが違うと、すぐにばれてしまう。  最後の最後まで信じきってくれる人に嘘をつく必要があるだろうか。  最後の最後までは信じられない人のために使う労力なんて、本当に必要だろうか?  嘘をつくために必要なことを話しているのではないよ。  いつか出会いたかった本当のことに出会う力について話している。  それだけが、何一つ確かなもののないこの世界でそれでも君が生きてい

          たった一つの大切なこと

          僕たちは永遠を生きられない。という事実に

          僕たちは永遠を生きられない。それなのに、どうしてだか僕たちは、永遠、というものについて考えてしまう。僕たちには到底、感じることのできない長い長い時の流れを、なぜだか物心ついて、永遠というものを知ってから若ければ若い時ほど考えてしまうのさ。僕たちは一生知る由のないものを、愛しているのかもしれない。憧れているのかもしれない。知りたいのかもしれない。本当のところは、よく分からないけど。 それはきっと「永遠」という言葉が存在しているせいでもある。そして「永遠」という言葉のせいで僕たち

          僕たちは永遠を生きられない。という事実に

          運命の女神 (10)

             十四、  鈴木優は総合病院の産婦人科で自分の順番を待っていた。ずっと来ることを躊躇っていたが来てみればそこは何一つ恐ろしい場所ではない。意にそぐわない一晩からもうひと月半が経過していた。「佐々木さん」とは連絡が取れなくなっていた。次の日に緊急避妊薬を処方してもらうべきだったが、誰にも「佐々木さん」との関係を説明することができず、産婦人科に来ることがひどく恐ろしく感じて、こうして生理がこなくなるまで来ることができなかった。たった一晩の行為で本当に妊娠するわけがないと思い

          運命の女神 (10)

          運命の女神 (9)

             十二、  ああ、なんでだろう。私、ずっとこのままでいいって思ってたんだな。ずっとこの先に進みたいって思ってたけど。何度もその先を妄想したけど。どうして先へ進んでくれないんだろうって思ってたけど。今ようやく訪れたこの変化が怖くてたまらない。変わらないことを受け入れていたのは諦めじゃなかったんだな。私がこの状態を受け入れていたからなんだな。  私には不釣り合いなくらいだった。この世界の星の数いるハズレに比べたらそんな。そんな人が関係を繋いでくれるだけで貴重だと思ってた。私

          運命の女神 (9)

          運命の女神 (8)

             十一、  何が病気で、何が病気でないのか、分からなかった。  総治は聡子の病気についてインターネットで症例を調べたり、本を読んだりしてみたが、何が悪いのかよく分からなかった。どんな症状が出る病気なのかも、どんな薬が必要なのかも、どんな風に接すればいいのかも書いてあった。確かにこれは聡子にも当てはまる、と思うところがあった。けれど、聡子の滅亡の話や夢の話が病気のせいなのかどうか、何を病気として切り離して良いのか総治には分からなかった。聡子の何が、間違っているというのだろ

          運命の女神 (8)

          運命の女神 (7)

             九、  「どうして怒らせるんだ」  と美杏の義理の父拓也はよく言う。  「どうして拓也のこと怒らせるの」  と美杏の母の桃香がよく言う。  二人とも驚くほど大きな声で言うので、美杏は首を竦めてしまう。そんなに私がいけないの。それでまた拓也を怒らせ、桃香を怒らせる。   怒らせるのは悪いこと。怒らせたのは私。  悪いことをしたから美杏が悪い。  美杏が悪いから、また怒られる。  ごめんなさいは、結局言った方がいいのか、言わない方がいいのか、今日はどちらだろう?  息を小

          運命の女神 (7)

          運命の女神 (6)

             八、  スーパーマーケットの思い出といえば、六つ上の兄が値下げシールの貼ってある惣菜ばっかり買ってくるってことだった。あとはパンとかも値下げ品。米も値下げ品。よくポソポソの寿司を食べた。兄の始末に負えないところは、値下げ品ばっかり買ってくるくせに賞味期限に全く気を使わないことだった。遅い時間に半額の惣菜を買ってきて、製品表示の賞味期限はその日の内なのに、次の日の夕食に食わされることがしょっちゅうあった。「だったら、俺はカップラーメンの方がいい」と言うと、「野菜も食わな

          運命の女神 (6)

          運命の女神 (5)

             スーパーマーケット  日本のスーパーマーケットは一九五二年だか、五三年だかにできたそうだ(Wikipedia調べ)けれど、正直これだけ生活に根付いているといつできたかは買う側にはもうどうでもよくて、生活圏の一部として、ただそこにきちんと問題なく存在していてくれることが重要だ。そして出来る限り利用者にとって、安さも含め便利であること、これに尽きる。良い商品が安く売られていること。良いものを得ながら、金という自由がまだ大きく残せること。そして一部の人には、とにかく安くてあ

          運命の女神 (5)

          運命の女神 (4)

             七、  今日は、ようやく野菜炒め以外のものを作ることができた。帰りにスーパーに寄って安くなっていた食材を買い、夕飯の支度をした。総治はどこかほっとした気持ちで食卓に料理を並べた。  「ポテトサラダにハンバーグ」  「なんかお子様ランチみたいなメニューになっちゃったな」  「ううん、どっちもおいしい」  ぱくぱくと料理を口にする聡子の姿を見ていると、不思議と総治の心は癒された。  買ってきた惣菜では、与えている感覚が小さくなるからなんとか作ろうとしているのかもしれない。

          運命の女神 (4)