手抜き介護 133 カブの浅漬け
あと5分ほどで実家から帰るというあたりで、母が「このくらいの漬物容器、アンタどこにしまった?」と両手で輪を作りながら訊いてきた。え、今? 急いで台所に戻りながら特徴を聞き、シンク下や食器棚のデッドスペースを探す。
大きな土鍋や石の壺を引っ張り出して、「もう使わないなら捨てても良いよね」と言ったら「まだ使うから捨てない」との返事。そうだよねー。そう思ってたよー(棒読み)。
目指すものは、わりとすぐ見つかった。直径15㎝くらいの、やたら分厚い陶器だ。重い蓋と、さらに1㌔の重しつき。
「これ、かなり重いよ。持てるの?」
「それくらい、持てるよ。それでカブを葉っぱごと漬けたら、すごく美味しく出来るの」
「でも洗うのが大変だわ。私が持っても重いよ」
「そんなの、お父さんがやるから」
母は指に力が入らないので、食事の時は介護箸を使う。挟んで持ち上げるのが難しくて、突き刺したり手で持ったりの合わせ技で過ごしている。あの容器、3㌔はあるだろう。洗って水切りに伏せておくこと自体、危険な気がする。
でもカブの浅漬けが、頭から離れないらしい。「お父さんに塩を頼んだら、サラサラのを買ってきた。私は粗塩が好きなのに!味が全然違うのに!」とご立腹。とりあえず、床の邪魔にならない場所に置いてきた。そこに現物があって、いつでも漬けられる状態なら気が休まるかと期待して。バスにはギリ、間に合った。