マンスリーから実家に通う ⑥オオズワイガニ、再び
小さなオオズワイガニ(!)がまだ豊漁らしく、スーパーに並んでいる。あの時以来(この記事https://note.com/kusakata/n/n7b39aa8ae0a0)私は見て見ぬふりをしているけど、今日父が2ハイ入り1パックを買ってきた。巷で話題になっていたころ入院中だった母にとっては、お初の対面だ。
予定外の登場に、「おかず、ほかにもあるのに」と文句を言いつつ、一応カニなので食指をそそられたようだ。ハサミを用意して食べ始めたが、細い脚に刃先が通らず、うまく身が取れなくてだんだんイライラしてきた。
「これ、いくらしたの? 1000円?」
「500円」
「お金捨てたようなもんだね。1つ500円?」
「…」
「よく買ってくるね、こんなもの」
父は前回と同じく、無言でちゅるちゅる食べている。自分が食べたかったのが一番だろうけど、美味しかったから共有したいという思いもあっただろう。少なくとも父は楽しんで食べているのだから「お金を捨てたようなもの」ではない。
「だったら食うな!」と、若いころの父なら言っただろうか。私の記憶の中の二人は、いつも大声で互いの気に入らない点を非難していた。耳が遠く、反応が遅くなって、あんな派手なけんかが見られなくなったのは何よりだ。