手抜き介護 143 キッチンにワゴンを
父がスーパーで買ったものを床に広げるので、拾うのが大変だからワゴンを買ってほしいと母がいう。お肉や野菜が乗ったワゴンを押して、冷蔵庫にしまう姿をイメージしているようだけど、そんな動線、玄関から台所まで確保するのは無理な話だ。
それで台所を片付けて、父がリュックからものを出して並べる空間を作ったのがふた月ほど前。リュックが置ける場所を確保し、父の負担も減らした。でも案の定、空間は少しずつ食器や果物やお惣菜パックに占拠されていき、ひと月もしないで見えなくなった。
実家には、平面がない。テーブルにはいつもごちゃごちゃとモノが載っているし、壁は所狭しと絵やカレンダーが貼ってあり服がかかっている。買って来たものを広げるための、何も置かない空間なんてありえない。
でも腰が痛いからワゴンが欲しいとまた言われて、もう少し考えてみることに。実は台所には、すでにワゴンが2台ある。もともと4つあったのを、歩行器の動線のために2つ処分した経緯があり、これ以上増やしたくない。物置き場になっている1台を、使えるように掃除したら良いのではと思った。
そうしてすっきりと蘇ったコンロ周りを見て、見違えるようだと母もとても喜んでくれた。3段棚が空いたようなものだから、これでお米も牛乳も一度に運べる。
その夜、母がちょっとキッチンに籠った跡を見たら、ワゴンの上には洗っていないお鍋とザルとフライパンがあった。翌朝は、周りにS字フックでごみ用の袋がかかっている。もはや動かすモノではない。だから、そういう風に使うところじゃないんだってば。