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老父と筋トレ

父のデイサービス先で、職員がコロナ陽性になった。ほかの職員は陰性だが、今日の利用はどうするかと問われ、行くと答えた父。しかし母は強硬に反対。私に電話がかかってきた。

父は89歳。御多分に漏れず糖尿病、高血圧、腎機能低下などそこそこの基礎疾患を抱えている。簡易検査では陰性でも、後日陽性だったという可能性も考えて、私も休んだ方が良いのではと思った。

「検査が陰性なんだから、問題ないだろう」
「いや、まだ現れないだけかもしれないから、今日だけ休んでおこう」
「行かない方が良いか」
「うん、ちょっと心配」

週に1度のデイなので、本人はとても楽しみにしている。無口で不器用な昭和ヒトケタ男だけれど、若い人に運動を励まされるのが嬉しいようだ。休憩時間にも、一人で外周を歩いたりしているらしい。

「代わりに、ウチで一緒に筋トレしよう!」
「ん?」
「ウチにある道具で、私と一緒にやろう。デイと同じに、1時に迎えに行くから」

思いつきで言ってしまったが、高齢者のトレーニング(いや、リハビリか)方法など、もちろん知らない。何かないかと動画を探してみたら、良さそうなのがたくさん見つかった。コロナでこもりがちの高齢者向けに、自治体がアップしているものだけでも相当数ある。中からストレッチ、体幹バランス、筋力アップなどが15分程度にまとめられているものをピックアップしてスタンバイした。

2人並んで始めてみたら、意外に気に入ったようで、動画以外につま先上げやかかと上げ、握力グリップなどもやってみた。続いてカウントしながら足踏みをしていたら、ふと幼稚園のときの冬の朝が思い出された。私の長靴より高く雪が積もった日、父がカニ歩きで足元を踏み固めて、大通りまでの道を作ってくれたことがある。父の職場は、幼稚園とは反対方向だった。あの時の足踏みが、今そこにあると思ったら、急に体が熱くなった。

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