手抜き介護 171 おいしくない
母が、「お弁当がおいしくない」という。初日から「まあまあ」で始まったので、早晩飽きてくるとは思ったけど、ちょっと早い。前は、「味が同じ」「工夫がない」「良い材料使ってない」という期間を経て「おいしくない」期に入ったのだけど。
目の前で同じものを食べている人に「おいしくない」を連発されるのも何だかね、と思うが、父はただ黙って食べている。内心は「だから要らんって言っただろ」ではないのかな。でも食べ物を粗末にできない性分でいつもキレイに平らげるので、栄養管理担当のつもりの母としては、その点だけ満足そうだ。
今日のメインは、お魚だった。母が「これ、何の魚?」と父に問う。幼少期、浜の町で暮らしたことがある父は、魚に詳しいし、好物でもある。
母「鮭?」
父「…」
見ると白っぽいのでタラかなと思いながら献立表を確認したら、ソイの幽庵焼きと載っている。
私「ソイだって。ソイの幽庵焼きって書いてあるよ」
母「ソイなの、これ。ソイならソイらしくお醤油で煮たら良いのに」
父「全然ソイの味せんな。ホッチャレの味がする」
ホッチャレ! 食べたことあるんだ、ホッチャレ。すごいな。あんなもの、お店に売ってるわけないから、少なくとも大人になって食べる機会はなかったはず。80年くらい前の味が、まだ記憶に残ってるんだなあと、ちょっと感動する。