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手抜き介護 159 何を優先するか

父には弟がいて、顔は似ているのだけど性格が全く違う。弟は明るくて友人も多く、よくしゃべる。お酒もたばこも大好き。父は口が重く、友はいないし体に悪いことは昔から嫌い。その両親はどちらも糖尿病で、息子たちも中年くらいで境界型を指摘された。

病との向き合い方も、当然ながら全然違った。父はできるだけ薬を飲まなくて済むように、甘いもの断ちをした。当時はべジファーストとか、食後の運動が血糖値を下げるなどの情報がなく、お酒もたばこも元々やらないので、改善できそうなことはそれくらいだった。

対して弟は、すぐ薬を処方してもらった。減酒減煙もかなり効果があっただろうけど、そんなことはしない。妻に止められても「美味いものを飲み食いするために、薬を飲んでいるんだ!」と聞かなかった。兄弟はその後、高齢になったこともあり、法事や年賀状のやり取りもなくなり没交渉に。

ある夕方、父がたまたまテレビを見ていたら、訪問医療の特集で弟の家が紹介された。そのとき取り上げていた医師の訪問先が、弟宅だったのだ。10年以上ぶりで画面越しに再会した弟は、かなり老け込んでいたという。でもインタビューを受ける声はしっかりしていて、軽く冗談なんかも言っていたらしい。

その夜、弟の妻から「夫が亡くなった」と連絡が来た。ほんの2時間前に映像を見たばかりなのでひどく驚いたけれど、収録は2か月くらい前のものだったという。父より先なのは順番が逆だが、どっちの生活スタイルが良い悪いではなく、それぞれが何を大切に、優先事項に持ってくるかだけの違いなんだろうと思う。豪快な叔父だった。ご冥福をお祈りします。


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