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キウイを揉む人

店頭のグリーンキウイが、1つ55円!
朝のヨーグルトには、キウイとブルーベリーが欠かせないので、10個くらいまとめ買いする。少々硬くても追熟していくし、はちみつをかければちょっとしたスイーツだ。

その日もキウイの山からポリ袋に取り分けていたら、隣のゴールドキウイを1つずつ揉んでは吟味するおばちゃんに気付いた。年のころは70代半ばか。揉んでは放る。また揉んでは放る。好みの硬さを選んでいるらしい。

そのキウイは、1つ120円。何となく、おばちゃんが買おうとしているのは55円の方じゃ?と思ったらその通りで、ふと値段のポップに気づいた彼女、それまで握っていたキウイをみんな放り投げてこっちの山に来た。そしてまた揉んでは放る。思わず言ってしまった。

「おばちゃん、そんなに揉むんでない」
「え?」
「そんなに揉むんでない」
「…」

お互いマスクをしているし、店内は賑やかでほかの人には聞こえていない。その後おばちゃんがキウイを揉み続けたのかどうかまでは見ていないけれど、よその人にそんな口をきいた自分にちょっとドキドキした。知らない人にため口でいちゃもんつけるなんて、生まれて初めて。

ムカついてるかなあ。年下からため口きかれて、一日プンスカかなあ。それとも案外「へ」でもないか。余計なお世話!程度かも。でも、おばちゃんじゃなくて、お姉さんと言ったらもっと感じ良かったかな。

「お姉さん、そんなに揉むんでない」
「え?」
「お姉さん♡ そんなに揉まないで」

これはこれで、ちょっと気色悪いか。

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