手抜き介護 80 マスクのおじさん
今回の実家滞在は、いつになく平和に過ぎている。もしかして、このままいけるかと思ったら、やっぱりそうはいかなかった。さっきトイレから戻ってきた母が、唐突に「私、ずっと監視されているの」という。
「誰に」
「マスクのおじさん」
「誰、マスクのおじさんって」
はす向かいの家の2階から、いつもこちらを見ているマスクのおじさんがいるとのこと。自宅から外を眺めるのに、マスクをしている? 「今もいる」というので見てみたら、確かにそんなものが見えなくもない。でも窓の位置から考えても、とても不自然な高さの顔だ。
他人の家をナンだけど、スマホで撮って拡大してみたら、白い箱の上に赤っぽいタオルのようなものが載っているのが分かった。ガラスでぼやけているので、遠くからだと顔のようにも見える。母にその画像を見せながら「人じゃないよ」と言ったけど、「そんなことない。お昼時間には引っ込むし、動くんだから」という。
家から出ることもないのに、何を監視されていると思うんだろう。夫や客人の出入りを、というならともかく自分を。ひそひそ話はみな自分の悪口と思うところがあるから、そんな気持ちの続きなのかなと思う。
実家から帰る前に、ヘルパーさんの曜日と時間の変更を確認しておこうと思ったら、「そんな話、初めて聞いた」と言われた。あらら。でもこれは、良く聞く介護あるある。調子良さそうに見えても、やっぱりあやふやなところを行ったり来たりしているようだ。