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手抜き介護 178 その時はそのとき
母の携帯が、ついに解約になった。弟とのホットラインだったのだけど、かけても出ないしかかってくることもないということで、諦めたみたい。一時は連絡がつかないと、「〇んだに違いない」「悪い男たちに拉致されたんだ」「食べ物もろくに与えてもらえていないだろう」なんて、妄想が膨らむばかりだった。80代半ばのお爺ちゃんを拉致してどうするんだと訊いたら、「腎臓を売るとか、いろいろあるでしょ」と。
よく知らないけど、叔父さんってそっちの道の人なの?と思っていたら、3年ほど前温泉旅行で北海道にやってきて、実家にも少し立ち寄った。何のことはない、普通のお爺ちゃん。でもいつも足りないものを探している母にとっては、独身というだけで、もはやカタギではない。
弟を呼び寄せて面倒を見たいと言っていたこともあったが、残念ながら自身がそれどころではなくなってしまった。居住地の福祉協議会とは連絡がついているので、もしもの時は家に電話が来る。その際の手続きも、私と打ち合わせ済み。
むしろ、こちらから実家への連絡手段が家電だけになったのが、心細い。携帯があれば、ショートメールで時間や準備の確認が出来るのに。父が最近好んで使う「その時はそのときだ」に任せるしかなくなった。