引っ越しの日にレンタカーを借りるとエモくなる

私は浪費家なのに、変なところでケチになる。

例えばこないだの引っ越しの話。

ダブルで家賃がかかるのをどうしても1日だけにしたくて、荷物の搬出～搬入～旧居の立ち合い～新居のガス開栓の立ち合いを全部同じ日にした。その日はもちろん 平日 だ（引っ越し代が安い）。

旧居も新居も都内の引っ越しだから行けなくはないが、きつい。そもそも家から駅まで徒歩20分の家に住んでいたので、その時点できつい。想像するだけできつい。

だからレンタカーを借りた。スケジュールはこうだ。

05:30　起床、最後のパッキング（洗面周り）
08:00　レンタカーをピックアップ
09:00　引っ越し屋さん到着、荷物を搬出
10:00　引っ越し屋さんと一緒にレンタカーで出発
11:00　新居到着、荷物を搬入
12:00　引っ越し屋さん撤収、少し開梱
13:00　お昼ごはん
14:00　新居出発
15:00　旧居到着、立ち合い
16:00　旧居出発
17:00　新居到着、ガス開栓の立ち合い

めっちゃ刻んだ。

iPhoneのカレンダーに、仕事以外の日でこんなにスケジュールが入ったことは多分ない。

イケメンで真っ黒な引っ越しのお兄さんに「お姉さん、レンタカー借りるとかイケメンっすね」と言われた。

でも、結論から言うとすごい良かった。めちゃくちゃエモかった。引っ越し × レンタカーは本当にエモかった。

私は1人で運転するのが好きで、今もめちゃくちゃ車が欲しいくらい好きだ。1人で運転するときは、ほぼ全曲歌えるアーティストをシャッフルでかけるのが好きだ。この日は 星野源 にした。

時々シャッフルが天才的な時があるが、この日のシャッフルセンスはその天才を上回るほどの天才だった。本当に絶妙だった。

08:00　レンタカーをピックアップ
◆ 夢の外へ、Crazy Carzy
アップテンポの曲が続く。見慣れたカフェ、見慣れた居酒屋、見慣れたスーパーが窓の外を滑っていく。今日は果たしてオンスケでいけるだろうか？若干のミッションインポッシブル感が楽しい（インポッシブルじゃ駄目）。

10:00　引っ越し屋さんと一緒にレンタカーで出発～新居到着
◆ Week End、日常、化け物
ミディアム～アップテンポの曲が流れる。曲がりくねる首都高を駆けたかったけど、事故渋滞で乗り切れず。ずっと楽しみにしていた新居に、お気に入りの新居に向かって、引っ越し屋さんのトラックと追い越し、追い越されをやっていた。

14:00　新居出発～旧居到着　
◆ グー、ステップ、Family Song
ミディアムテンポな感じが少しスローに聴こえた。旅行帰りに何度も通った道だ。巨大なシェアハウスに住んでいた私は、みんなでキャンプに行って、温泉に行って、何度も一緒に帰ってきたのがこの道だと覚えている。お昼過ぎなのに、なんとなく夕方感。

16:00　旧居出発～新居到着
◆ 知らない、くだらないの中に、老夫婦、Stranger
やたら初期のころの曲がかかる。染みてくる。飲むように聴く。ただいまと言ったら、誰かがおかえりと言ってくれるあのシェアハウスにはもう帰らない。これからは 行く場所 になる。平日の遅い朝～早い夕方にしか空いてないあのカフェ、ずっと行こうと思ったまま、目の前を過ぎ去った。最寄りの高速道路の入り口は、いつもどこかに行く時ワクワクしながら超えて、また戻ってくる出口だった。

17:00　新居到着
◆ Continues
なんだか切なさをはらむ大好きな曲が、その日は切なさ2割増しだった。でも、なんだか新しい光をはらむ大好きな曲が、その切なさを明るく消化させてくれた。

最後の左折で、iPhoneのSiriが何故か起動した。Siriはその日、本当にタイミングが良かった。私のリクエスト曲は

◆ 透明人間（Just can't help it.より）/ 東京事変

東京事変の解散コンサートを見てから、私の中で 終わり～始まり の曲はこの曲一択になった。ほぼ脊椎反射のリクエストだった。

「またあなたに逢えるのを楽しみに待って」

「さようなら」

つまり

引っ越しの日にレンタカーを借りて、自分の人生の内に触れてきた曲を聴きながら旧居と新居を行き来すると

とてつもなくエモくなる。そして引っ越しも1日で終わる。お得。

星野源さん、東京事変さん、ありがとう。