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プラハで過ごす11月17日(旅の3日目)
今回の旅が、ビロード革命記念日とよばれる「自由と民主主義を求める闘いの記念日(Den boje za svobodu a demokracii)」にあたっているのはうすうす気づいていた。
でも、今回の旅はこのあと予定しているアルメニア人のピアノコンサートを見るためにまず計画したものであり、ビロード革命うんぬんは狙ってはいなかった。
私はそういう特別な日があまり得意ではない。
もともとこの日の予定は宿の移動と夜の映画だけ。
映画はスロバキア前大統領のドキュメンタリーで、チェコスロバキアのビロード革命というより、現代のスロバキアへの興味によるものだった。
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しかし、11月17日にプラハにいて、無関係でいられるわけがなかった。
何かよさそうなイベントあるかなと思って出発前からSNSをチェックしていたが、出てくるのはもうこの祝日に関連のあるイベントに決まっていた。
ということで、プラハにいた11月17日はこんな一日だった。
午前中は荷物をまとめて、90分ほどオンラインでチェコ語の小説を読むクラス。終わったら、宿をチェックアウトして、荷物を預けてお出かけ。
まずはCAMPというマルチメディアアート施設へ。
外からはどこに入り口があるのかわからず(チェコあるある)、地味な入り口から中に入るとかなりの人で混雑していた(これもチェコあるある)。
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奥へ進むと、ホールの入口でスタッフの若いチェコ人に、いまから入ると途中だけど23分あるから、終わったあとに見れてないところを見るといいかもしれません、と丁寧に説明してもらい、中に入る。
Soundtrack of Prague - SVOBODAという映像作品を鑑賞するのだ。
しばらく見ていると、去年京都で見た「AMBIENT KYOTO」の坂本龍一×高谷史郎の映像作品を思い出した。
似ているけど、こちらの映像作品は目的がはっきりしていて、ビロード革命のことをよりよく知る、思い出す、そのための演出、音楽、映像だ。
でも、アートとして見ているだけでもとてもかっこいいし、飽きないし、印象的で美しい。
途中から入ったが、20分ほどはたっぷり見られて、終わったところでプロデューサーのピエール・ウルバン Pierre Urbanさんがご挨拶されていた。
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そしてこのとき気づくのだ。
スクリーンに使われている「SOUNDTRACK OF PRAGUE-SVOBODA」の文字。
私が行こうとしてるアルメニア人ピアニストのコンサートも同じロゴ使ってあった…。ということは、同じイベントのプログラムなのか。
つまり、アルメニア人のコンサートが私をビロード革命のプラハに誘い出したんだなー。なんという計らい。心憎し。
その後、近くのおいしいおしゃれパン屋さんで昼ごはんをすませ、ぐずぐず過ごしたい気持ちに向かって、今日プラハにいて行かない理由なんてないだろ?と挑発し、ナーロドニー通りの方へ向かった。
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しかし、後でわかったのだが、このイベントでナーロドニー通り、ナーロドニー・トシーダと呼ばれるエリアのトラムはルート変更していた。
思ったようにナーロドニー通りに行けない。
何度か乗り換えて、しかたなく徒歩で向かった。
いつもは車やトラムが走る道を、大勢の人が歩いてた。
インフォメーションがあって、リボンをもらう。
他にもろうそく、パンフレット的な冊子も置いてあって、カンパ箱が設置されている。
リボンと冊子をもらって、200kčを寄付してきた。
チェコの自由と民主主義が守られる一助になるなら安いものである。
私が前澤友作だったら個人の欲望実現のためにお金配りなどせず、ここのカンパ箱をお札で埋めたいところだ。
もらったリボンは白、赤、青の3色。
午前中からこれをつけている人を見かけて、欲しいなと思っていたのだ。
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そういえば、14時からの旧市街広場でのイベントも観ようと思ってたんだ、と思い、少し急ぐ。観光客が通る細い道を抜けて広場へ。
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広場ではほどほどの人だかり。野外ステージ、オーロラビジョン2カ所が設置されていた。
ちょうど企画のMilion chvilek pro demokracii(民主主義のための百万の瞬間)という団体の代表の女性がスピーチをしていた。スピーチといっても、お祝いのコメントではなく、自由と民主主義を守るために私たちはひきつづき戦っていかなくてはなりません、という主張だ。
その後、民主主義がおびやかされているスロバキアから、政治家たちにクビにされてしまった国営テレビの元社長、それから現在の政府の問題点を伝えるスロバキア人の大学生2名がスピーチ。
その後も歌手や俳優も登壇したあと、スロバキアの前大統領チャプトバーのビデオメッセージも流れた。
そろそろ寒くなってきたし、と旧市庁舎に入ってみる。
タワーに登って上から広場を見下ろしてもいいかも、と思ったが、入場料が300コルナ(約2000円)もするし、エレベーターを使うなら追加料金を取られるらしく、おとといから連日たくさん歩いていてここから階段か、と思うと気が遠くなったのでやめた。
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あらためて広場に出ると、「最後のスピーカーです。映画監督のオルガ・ソメロバー!」と声が聞こえた。
あ、ソメロバー監督、来日した時にお会いしたことある、と思ってステージを改めて見に行った。
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ソメロバー監督が、「民主主義をおびやかす存在がチェコにもいます、バビシュはどうですか、オカムラはどうですか」と言っていた。
まさか日本語の名字を聞くことになるとは。忘れてた。チェコにはポピュリスト政治家として有名なトミオ・オカムラという男性がいるのだ…。
ときどきチェコ人から聞くオカムラの発言は本当にアレだ。日本でもアレな政治家が増えてきたけど、そうだよな、我が国はオカムラを生んでしまったんだもんな、と妙に反省してしまった。
あの人と戦わなくてはいけない。
広場の様子もわかったので、ナーロドニー通りへ。
国民劇場の近くにあるバーツラフ・ハベル広場と名付けられた場所。ビロード革命の代表的存在であるハベルはサインにハートマークを添えていたことからだろう、ここにはハート型のモニュメントがあり、この日はそのまわりにろうそくが灯されていた。
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ビロード革命がなかったら、バーツラフ・ハベルがいなかったら、私はチェコ語を勉強することはなかったかもしれないし、こうして教えることもできていなかっただろう。
チェコに30回近く旅行しているなんて、共産主義のままだったら無理だった。
ナーロドニー通りには、ステージ、たくさんの人、軽食を販売するブース、写真展示、インフォメーションとバラエティ豊かに並んでいて、お祭りっぽい雰囲気があった。お祭りより人出は多いかもしれない。主催者発表だと10万人弱が参加したという。プラハの人口は133万人。
ナーロドニー通りを進んでいくと、人はますます増えていった。なんかどっかにビロード革命の記念プレートがあるんだよな、どのへんだっけ、と思いながら歩いていたら、人の列が前に進まなくなってきた。
あ、ここに記念プレートがあるのだ。
人だかりで見えないけど、せめて写真に撮れないかなとiPhoneを目一杯掲げて撮るも、やはりチェコ人の身長は高い。2メートルくらいの人がいる。
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モニュメントのある壁から離れて、正面から向かってみることにした。
みんなロウソクを供えて、写真を撮ったらすぐ交代してくれる。私も無事に11月17日の様子をおさめることができた。
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さて、そろそろ荷物を取りにホテルに戻って、今夜からの宿へチェックインしないといけない、とトラムが通っているエリアに戻ろうとして、気づいた。
さっきから北側の壁になんか布が張ってあるなとは思っていたけど、これつなげると単語になるんじゃないの…?
そう思って、角の建物からもう一度、中心にぐんぐん歩いてアルファベットの文字を順に写真に収めた。
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やっぱり「SVOBODA」だ。
7つの文字が400mくらいの距離に並んでいた。Oの文字は夜にプロジェクションマッピングされたりしていたようだ。
おもしろいし、楽しいし、飽きない仕掛けがよくできている。
こんなおもしろいイベント、めったにないと思うんだけど、さらに不思議なのはこれが目的がたった一つだということ。
チェコを共産主義時代に戻してはいけない、みんなで自由であることの大切さとありがたさ、民主主義の大切さを思い出そうよ、とみんなでいろんな形で訴えている。
このあとホテルからホテルへと30分ほどトラムに乗ったのだが、途中でトラムが動かなくなり、どうしたのかなと思ったら、打楽器とチェコ国旗を持ったパレードが通り過ぎていった。いろんなところでいろんな動きがあって、追いきれない。
でもそれも「この日を思い出そうよ」って楽しげに、あるいは必死に、いろんなニュアンスでとにかく訴えているということなのだ。
伝えることの大切さ、伝えることでしか物事は動かない、というのを知った日だった。
日本の社会や政治についてモヤモヤすることが増えて、それがストレスになったりもするけど、それをなあなあにせずに言葉にして伝えることはやったほうがいいのかもしれない。
大事なことなのに伝わらないなら方法を変えて何度でも伝えてみる、というのは大切なんだ。
ただ座して死を待つのみ、みたいな生き方はもうできない。
そんな強い気持ちをもらって、次の宿へ。その夜20時から映画を見たのだが、それはまた別の記事に書こうと思う。
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![Hatsue Kajihara](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/155502236/profile_bdf40c478216f286e0799e246f6707c7.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)