【ショート・ショート】さくら その2
ある夏の日、ドライブの帰りに休憩に寄った牧場での話。
車を降りた途端、灼熱の空気が纏わり付く。
暑ーいっ。
私達は売店の入り口でソフトクリームを買った。冷たくて滑らかで濃厚で美味しい。
でもまだ体が涼を欲している。
売店に入って冷気を浴びる。
売り場には牛肉、加工品、乳製品が所狭しと並べてあった。
常連らしいおばさんが『自家製ハンバーグ』を十個注文するのを聞いた。
「旨いのかしら」と妻。
「だろ、十個も買うくらいだから」
「サクラじゃないの」
「サクラじゃないだろう、そうは見えないぞ」
「そう。じゃあ、うちも買って行く?」
「うん、そうしよう」
車に戻る途中、
「あれっ、さっき偽客って言った?」
「そうよ」
そうか。私は失笑する。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「変なの」
何の事はない。私は馬肉と聞き間違えていた。
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