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【ショート・ショート】匂い その2

まりのにおいがする」
 サキは幼馴染みだ。

 僕は思わずTシャツの肩口を交互に鼻に持っていった。
「何してるの?」
「別に」
 僕は気づかれないように、サキから半歩下がった。夕べは遊び疲れて、風呂に入らずに寝てしまった。
 だから登校の途中でサキに会った時から気になっていたんだ。
 さっさと行けばいいものを、サキは僕の横に並ぶ。

「拓くんは、日溜まりの匂いがするの」
 サキが繰り返した。僕はすそめくり挙げていだ。バレたようだ。
「やっぱ、臭うか」
「あっ。また、風呂に入らなかったのね。きったない」
 サキは、僕の風呂嫌いを知っていて、その都度母親みたいに「ちゃんと入りなさい」と尻を叩く。
「うるせえなあ。お前に関係ねえだろ」
「そうだよね。まっ、いいか」
 サキは僕をおいてさっさと歩き出した。

「待てよ。気になるなあ。日溜まりの匂いって何だよ」
 サキは少し前を後ろ向きで歩きながら、
「うーん、上手く言えないけど……」
 後ろ手に持ったスリッパ入れが揺れている。
「だったら、変なこと言うなよ」
「でも、嫌な匂いじゃないよ。私、好きだよ」
 サキはスカートをひるがえして、走っていった。後にはシャンプーだろうか、淡い何ともいい香りだけが残った。

 僕は、心の中で叫ぶ。
 僕はシャンプーの匂いが大好きだ!!。
 


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来戸 廉
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