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廃線予定の線路をかみしめて根室本線(北海道その2)
葬式鉄と呼ばれる鉄道ファンは、廃止間近の路線や車両に押し寄せ、批判されることがある。普段から乗車することの重要性を理解しつつ、私は廃止3か月前に、忙しさを理由に訪問を先延ばしにしていた根室本線を訪れた。
(2024年1月訪問 北海道2日目その1)
根室本線は、北海道の東端と道央を結ぶ幹線であったが、石勝線の完成により、峠を越える区間はローカル線へと格下げされた。特に東鹿越と新得の間は水害で不通となり、2024年の春には富良野までの区間が廃止されることが決定した。不通区間は仕方ないとしても、今回廃止される富良野から東鹿越までの区間は、ぜひ乗車しておきたいと考えている。ただし、この区間は非常に閑散としている。景色を楽しむためには明るい時間帯に乗車する必要があるが実質的には1日2往復しかない。混雑を避けて朝一番の列車に乗るために、帯広駅前のホテルを夜明け前に出発した。
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始発の特急に乗り込み、新得で降りると、私を含めたわずか3人だった。おそらく皆、同じ目的であろう。駅前に出ると、北海道の冷たい空気が肺を刺激する。小さなバス停には、意外と大型のバスが到着した。普通列車からの接続も含め、意外と多くの人が乗車する。バスは国道38号線をゆっくりと進む。白い世界に覆われた峠道に2本の轍を残しながら、慎重に登っていく。途中、根室本線の駅に立ち寄りながら、1時間以上かけて東鹿越を目指す。
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東鹿越に到着後、短い乗り換え時間を考慮し、1両のディーゼルカーへ急いで乗り換えた。東鹿越を発車するとすぐ右手に金山湖が見える。ダム湖の湖面は完全に凍結し純白の平原が広がる。樹氷と雪原と水墨画のような世界に息をのむ。二重窓により外界から隔絶された車内は、エンジンの低い響きと共に、じんわりとした暖かさに包まれている。冬の北海道を列車で旅すると、まるで別世界にワープしているような感覚に陥ることがある。それくらい雪の世界は静寂である。
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富良野からは乗客が増える。長めのトンネルを抜けると終点滝川が近づく。外を眺めていると、それまで細かな粉雪だったのが、べっちょりと重い雪に変わっているのが見て取れる。日本海側に出て雪の質が変わったのだ。
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滝川に着いて写真を撮ろうと車両の後ろに回ると、びっしりと舞い上がった雪が車体にこびりついている。雪国特有の厳しい寒さが体を包む。滝川からは特急で札幌を目指すことにする。
次回につづく。
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