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更新されるアート。小杉湯の“銭湯絵”を見に行ってきた
お湯に浸かることには間違いなく心を元気にする効果があると思う。
ただし、元気がないときに自分でお風呂を掃除して、お湯をためて、静かに湯に浸かるのはとんでもなく気合がいる儀式だ。
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そういうときの駆け込み寺が銭湯だと思っている。
食事におけるワンコイン定食。
洗濯におけるコインランドリー。
読書におけるオーディオブック。
二日酔いにおけるポカリスエット1.5L。
クリスマスにおける月島のもんじゃ屋。
大晦日におけるガキ使。
なんでもいいんだけど、銭湯とは私にとって「逃げ場」である。仕事から逃げ、人間関係から逃げ、将来から逃げ、とりあえず一服するか、という時に来る(主に週1くらいのペースで)。
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そんな私のホーム銭湯は高円寺にある小杉湯だ。
有名だから知っている人も多いと思うし、わたしも近くに引っ越してくる前から知っていた。
先日、その小杉湯の壁絵が新しく塗り替わった。
直近の絵は鮮やかな水色の富士山と海。通いはじめてから何回か変わっていた気がするので、意外と頻繁に変わるんだなと思った。
記憶だと「ナカジマ」とカタカナでサインが入っていて、絵を更新した日付が入っていた。前回の絵は2022年の夏か秋ぐらいの日付だった気がするので、1年くらいで塗り替えているのか。
そして今回は、特別に絵を塗り替えるところを見学できるらしく、見に行ってきた。見学開始時間の12時に行ったら、先客は男性お一人だけだった。女湯の脱衣所の真ん中にあるベンチにポツンと座って「こんなにゆっくり見れるとは思ってなかった。塗り替えるところを見させてもらえるのはかなり貴重ですよ」と教えてくれた。たしかに、テレビの取材とかでないかぎり、見たことがない気がする。
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わたしもベンチに座って見ることにした。静かな浴室にツンとしたペンキの匂いと、ぼんやりと反響する会話が心地よかった。絵師のナカジマさんのほかにお弟子さんと思わしき方が2人いて、3人で作業されていた。
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足場は脚立やプラスチックのコンテナを組み合わせてできており、移動するたびに、ぎっぎっと音を立てていた。塗る場所に合わせて足場を組み替えていく。
これだけ静かだと、ペンキがメシメシと壁に塗りつけられる音も聞こえる。今でこそASMRという名前がついて一般的に主張していい雰囲気になっているけど、わたしはこういう作業音が大好きだ。
写真を撮りたいけど、シャッター音が邪魔なので迷いつつちょっと撮った。
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鮮やかな富士山が薄縹(うすはなだ)のような渋い色に塗り替えられえいく。富士山の下のデザインは大きく変わるようで、水色のペンキでアウトラインがとられている。てっきり真っ白に塗り直してから書き直すもんだと思っていた。元の絵が見えている状態で新しいデザインをイメージするのはとても難しそうだ。
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作業を眺めていると脱衣所の手前にお弁当が届けられ、お食事タイムになった。ジロジロ見るのも申し訳ないなと思い、一旦退散してあとでまた見に来ることにした。
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――3時間後、戻ってくると女湯側は完成し、作業場は男湯のほうに移っていた。
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ここにこんな小島はなかった。わたしが親子丼を食べている間に……。
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男湯のほうに移動すると、ギャラリーがたくさん増えていた。お弟子さんらしき人が範囲の広い部分の色を塗り、ナカジマさんはタバコを吸いながら眺めていた。
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ひょいと腰を上げると富士山の右側に取り掛かり始めるナカジマさん。この時点ですでに見学予定時間は過ぎていたけどたくさんのギャラリーが見守る。
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ところで、わたしは仕事をほっぽりだしているのでそろそろ戻らねばならない。たぶん完成を見るのは次に小杉湯に来た時になる。最後に見た景色はこれ。
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男湯の端の方なので覗き込んでも見えないかもしれない。
ここにはいったい何が描かれるんだ……。と思いながら帰路についた。
男性の方、ぜひ小杉湯に行った時は何が描いてあったか教えてください。
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おわり