サイゼリヤ短編集③~ミラノ風ドリア

みんなのサイゼリヤ。私のサイゼリヤ。


私が初めてセックスした相手は
幼なじみのくるみなんだけど、


※〇〇のくるみシリーズ

すべての女性はくるみで、
くみるはすべての女性なのです。

というマイルール。


そのくるみとは
様々な初めてがあった。


ひとり暮らしの
女性の家に入ったのは
くるみが初めてだったし

親以外の人にご飯を作ってもらったのも
(パスタ対決とか、朝ご飯ドヤ大会とか楽しかったなぁ)


夜、抱き合って寝たのもそう


彼女と2人で飛行機に乗ったのも
幼なじみのくるみが初めてだった。



大学入学と同時に付き合う事になった
幼なじみのくるみとは、

幼稚園が一緒で、


中学生くらいまでは、
毎年1回は何人かで会っていた。

大体スキー場に泊まりで行く事が多くて
夜中までみんなで部屋に集まって
幼稚園の頃の話をしていた。

今、久々にみんなで会っても
話す事はなんら変わらないのだけど。



たまたま大阪でくるみと会って
それまではまったく恋愛対象として
意識なんてしてなかったけど

一気に恋に落ちた。


遠距離になるって分かってはいたけど、
付き合う事になって。


くるみは大阪で、
おれは北海道の学校に進学した。


GWの連休に、
くるみが住んでいる大阪へ
一緒に飛行機に乗って向かう。


北海道では桜が咲く時期で
朝晩はまだ冷え込み
肌寒い日があるくらいなのに

5月の大阪は
もう夏か?

ってくらいに暑かったのを覚えている。


くるみの家は
新大阪から北へ行った
千里中央
という駅よりも、もう少し先にあって。


関西国際空港からは
なかなかの遠さだった。


やっとこさ着いたくるみの部屋は
初めて入る女の子の家だったけど

不思議と緊張することもない
古めのアパートで

6畳のワンルーム。

畳の部屋で、敷布団を使っていた。


(ちょうど生理でえっちできなかった思い出あり)


アジアンテイストの家具が流行っていた時期で、
オリエンタルなバリにありそうな箪笥があったり

部屋では「ベタ」という金魚みたいなのを
小さい鉢で飼っていた。


くるみが得意そうに、

「ねぇ、ミラノ風ドリア食べに行こうよ」

と晩御飯を誘って来たので、


土地勘の分からない俺は
ただついて行くしかなかった。


「ミラノ風ってなに、風って!」


くるみのアパートから
歩いてすぐのところに

サイゼリヤがあった。


当時、
北海道にはサイゼリヤは無かったので

その初めて口にした

熱々の薄っぺらいグラタン皿に
チーズとミートソースが
ドロっと目一杯入った
ミラノ風ドリアが299円だった事に

心底驚いた。


これが俺とサイゼリヤとの
出会いであったと同時に


くるみとの思い出でもある。



大阪はなんでも安いんだなぁ。


とアホな知識だけ植え付けたまま
月日は流れ、
くるみとも別れた。



今でもサイゼリヤの
ミラノ風ドリアを見ると


あの時の
くるみとの楽しい思い出が
どうしても蘇ってしまう。


良い思い出なので、
大事にとっておこう。


くるみと別れて
早いもので4か月が過ぎた。


彼女は元気にしているだろうか。


気にはなるが
連絡をとろうとは思わない。



ミラノ風ドリアを食べて
俺を思い出すなんて
これっぽっちも
無いだろう事が分かったのも


また付き合ってから
当時を色々と話していると
気付かされたからなのか。


あの時の味のまま


値段は1円あがってしまったけど


ずっとずっと
良い思い出にしておきたい。







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