電動車椅子は危ない、の勘違い
私がいつもいくスーパーマーケットに、1人で買い物に来る車椅子ユーザーがいます。彼女は、腕の動きが思わしくなく一回に10センチ程度しか前進しません。
ある日、その方が横断歩道を渡っているのを見かけました。片側2車線の道は、かまぼこ型に真ん中が盛り上がっていることもあり彼女の車椅子はなかなか進みません。歩行者は彼女を追いこしていきます。
もうすぐ信号が点滅するのに、彼女はまだ半分にも至っていません。私は次の信号を渡ろうと思っていたのですが、彼女の車椅子を押すことにしました。
「こんにちは。私はヘルパーの資格を持っている車椅子屋です。信号が変わりそうなので、横断歩道を渡るまで押してもいいですか。」
快諾をいただいて、ちょうど信号が赤になる頃に横断歩道を渡り終えました。
彼女に当てはまるかはわかりませんが、思うように走行できない方が外出での実用を考えるなら電動車椅子を使うことをお勧めします。障害者手帳での車椅子支給の場合は、電動か手動かを決めるのは判定になります。しかし、介護保険での車椅子レンタルの場合は必要性が認められれば電動車椅子を選択することができます。
しかし、福祉用具専門相談員をしていた頃の印象では、家族やケアマネジャーさんが「電動車椅子は危ないから」と受け入れられない傾向があったように思います。危ないから手動車椅子を外出の手段としてお勧めする方は、一度、手動車椅子で外出をしてみることをおすすめします。
道には水勾配という傾斜があり、手動車椅子がまっすぐ進むのがとても難しい設計になっています。頑張ってこいでも、道の端に流れていきます。こいでいる最中は、視野が狭くなりアスファルトばかり見ていることに気付くでしょう。歩道にも車が出入りするための傾斜があり、かなり力を入れても車道側に流れて行ってしまいます。そのまま車道に流れてしまうと、命にかかわります。それが怖くて、車道を移動する車椅子ユーザーもいます。横断歩道から歩道へ上がるのも段差があり、信号が変わるまでに上がらなければと焦ります。
一方、電動車椅子は水勾配も歩道の傾斜も、引きずられつつも安全に移動することができます。横断歩道から歩道へ上がるのも、手動より上がりやすくなる方がほとんどです。視界も狭くなりにくいため、安全確認をしやすくなります。
電動車椅子は危ないとのイメージを持たれている方もいらっしゃいますが、電動の操作ができる方なら、手動よりも電動の方が安全に楽に移動できるのです。そして、屋外移動が楽にできるようになれば、外出の機会や時間が増えるかもしれません。例えば、月1回カフェにコーヒーを飲みに行く。いつもと違う道に入り、遠回りをしてみる。特別贅沢なことではありません。私たちが当たり前にしていることです。
命からがら、必要最低限の生活を送るのは誰でも疲れるものです。車椅子が変わるだけで、ほんの少しの気持ちの余裕が持てるなら私はそちらをお勧めします。車椅子がその方の生活を豊かにするものであって欲しい。そのように願っています。
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