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カーデザインを評論するということ

去年の9月に会社を退職して以来、
主な仕事の一つに「web媒体での執筆」があります。

これらのほとんどはカーデザインに対しての記事で、
私なりに読者にわかりやすく解説しようと心がけています。

さて、皆さんは「カーデザイン」というものをどのように感じているでしょうか?

カタチの良し悪しなんて人の好みだろう?」と考えている方も多いと思います。

それは半分正解なのですが、
半分はもう少し普遍的かつ論理的に説明できるものと考えています。

ここでは、その普遍的な部分を少し触れようと思います。


「普遍的」なカーデザインとは?

VOLVO EX30は、シンプルながらプロポーションへの強いこだわりが感じられるモデル


クルマというものは発明されて雄に100年以上経っているので、
とても成熟したプロダクトです。

ですので、デザインにおいても「普遍的な作法」が長い年月で培われているんですね。
その普遍的なものというのは、大きく分けて2つあります。

一つは「塊感」、もう一つは「踏ん張り感」です。

これらはクルマの「プロポーション」を構成する重要な要素ですね。

「塊感」とは、ボディ全体に、ラグビーボールのように「強い軸」を感じさせることです。
軸を感じさせると、ボディに一体感が生まれます。

「踏ん張り感」とは、タイヤが4隅でしっかり地面を掴んでる様に見える事です。
タイヤというのは、カーデザインにおいて一番重要なものかもしれません。

これら「塊感」と「踏ん張り感」をしっかり表現していると、
大抵のクルマは魅力的なデザインに見えます。
では、それは何故でしょうか?

私は、カーデザインには「安心感」と「安定感」が不可欠だからと考えています。

クルマとは速い速度で、遠くに行ける乗り物です。
ですので私たちはクルマを無意識のうちに「自分を守ってくれる」「頼りになる」存在に感じているのではないでしょうか。

それを「安心感=塊感」「安定感=踏ん張り感」でそれぞれ表現している、ということです。

昔からのクルマ好きは、一般的に
「欧州車はかっこいい」「日本車はダメだな」
という固定観念があります。

私から見ると日本車にも良いデザインがたくさんありますが、
欧州車は「塊感」と「踏ん張り感」をピュアに表現しているクルマが多いので、
その様な評価になるんですね。

ではどの様に「塊感」や「踏ん張り感」を表現しているかという「手法」の話は、また別の機会にお話しいたします。


カーデザイン評論は、モータージャーナリストの新しい項目?

マツダのコンセプトカー アイコニックSPのデザインは、各方面から絶賛された


従来、モータージャーナリストにおけるクルマの評論というのは、多くは走行時に起因してる事柄です。

運動性能や走行安定性、または静粛性など、乗らないと分からない部分ですね。

もちろん居住性など、機能的な部分もフォーカスされているのですが、
こと「デザイン」に関してはノータッチか、
もしくは主観的な意見で押し通す事がよくみられます。

本来「感性的」な、走りの部分を説明できる様に、
「デザイン」に対してもある程度そのアプローチが出来ると考えます。

それが私の役割なのですが、一般論として、デザインの良し悪しをしっかり語れるジャーナリストがもっと増えると良いなと感じています。

みんなで議論できる土壌が出来ると、より魅力的なデザインの車が生まれてくると思うのですが、いかがでしょうか?

開かれたデザイン開発を


このように光が入るデザインスタジオは、まれ。密室のスタジオがほとんど


自動車開発とは、一台のクルマを開発するのに初期検討から発売まで数年かかり、
かつ莫大な予算がかかる巨大プロジェクトです。

それゆえ、開発時は機密事項ばかりで一般の方はおろか、
社内の違うプロジェクトの人でも安易に情報に触れられないようになっています。

その中でも「デザイン」はまさにトップシークレットであり、
例え同じ車種の開発に携わっていても、
発売までカタチを知らなかったという方も多いです。

そんな感じなので、クルマのデザイン開発は、まさに「密室」で行われています。

一方、現代社会において、トレンドの変化は凄まじいです。
また「多様性」を重視しているので、トレンドそのものが無い(分散している)という感じもあります。

その中で、自動車開発だけは何年も密室にしているのは、メーカーを退職して外から見ている私からすると、やや無理があるように思えてきました。

これからは、もしかしたら「ユーザー共創形デザイン開発」もアリかもしれませんね。

そうなれば、一般の方も、ジャーナリストも、カーデザインの議論が深まっていくのではないでしょうか?



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